数理心理学
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吉野 諒三・千野 直仁・山岸 侯彦(2007).数理心理学──心理表現の論理と実際── 培風館
本書紹介 from 培風館
人間の行動や心理現象を科学的・数理的に研究する「数理心理学」の入門書。数理心理学の歴史と発展を概観し,いくつかの具体的な理論やモデルを例示しながら丁寧に解説。さらに,最近の動向と今後の展望についても言及する。本書は,数理心理学特有の理論展開のスタイル(様式)を学べ,読者自身の科学哲学を確立し,自らの理論やモデルを構築する際の指針として絶好の解説書といえる。
*目次*
1章 数理心理学とは
2章 公理的測定論の基礎
3章 心理学における微分力学系の基礎
4章 意思決定
5章 「データの科学」としての計量的文明論
6章 将来の発展のために
本書感想
心理学における測定について学ぼうと思い手にしました。心理学には測定の古典的理論,表現理論,操作理論が主にありますが,そのうちの表現理論に基づいて心理を考えていくのが数理心理学です。正確にいうと,測定の表現理論から始まり,科学一般に通じる測定論として公理的測定論が整備されましたが,これに基づく心理学が数理心理学です。
数理心理学というだけあって,数学を学んでいないと数理心理学は無理です。3章,4章,5章は数式が出てきますが,何をしているのかは概ねわかりますが,詳細は理解できませんでした。そして,ここ(つまり,数学わかる人しか取り組めないこと)が数理心理学の課題であると述べられていました。
ただ,本書の1章,2章,6章は心理学を学ぶ人であれば一読の価値があります。というのも,それらの章は心理学史であり,心理学の哲学が述べられているためです。「心を捉えるとはどういうことなのか」「心とは何か」を考えているという点では数理心理学者もそのほかの心理学者も同じであり,むしろ数学的に心を捉えるにはどうしたらいいのかを考えている分だけ,数理心理学者の方が心について考えているとさえ言えます。
数理心理学がもっと心理学に浸透するといいなと思いました。
ページ数から見る著者の力点
本章は6章から構成されています。各章のページ数は以下の通りです。ただ,本書は1・2・5・6が吉野先生,3章が千野先生,4章が山岸先生という構成ですので,ページ数の多寡を力点として見るのはあまり適切ではないと思いますが,情報として載せておきます。
1章と2章のページ数が多いことからも本書の「心理学史」「心理学の哲学」的側面があることが読み取れるかと思います。