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駒井哲郎展@埼玉近代美術館いってきた

連休は台風が来るという天気予報だったので、早めに行ってきました駒井哲郎展。

今日は、作家の堀江敏幸さんの講演会もあって、それを狙って行ったんですが、まずは腹ごしらえということで、埼玉在住のお友達にオススメをきいて教えてもらった浦和の和食屋さん、新(arata)でランチを。

洒落た割烹料理のお店で、夜はちょっとお酒も飲んだらすぐ一万円ぐらい行っちゃう感じのお店ですが、ランチは2500円前後のメニューがあります。

鯛茶漬けもいいなと思ったんですが、鯛は愛媛で散々食べてきたので、今回は1日10食限定という(←こういう煽りに弱いタイプ)ちらし寿司のセットにしました。

開店と同時ぐらいに入ったので、最初はお客さん私1人でカウンターのオーブンキッチンがよく見える席に案内されたのですが、料理人さんの手元を見ているだけで「あ、これからとても丁寧な和食を食べられるんだ」っていう期待が高まるような感じ、ワクワクします。

ワクワクしすぎて昼からついスパークリングワインをつけてしまいました。お料理はこんな感じです。

前菜。柿とかナントカとかカントカとか生麩の和え物です。説明してもらったけど覚えられませんでした…。

メインは三重の木箱で提供されるのでワクワク感があります。広げるとこんな感じ。

私の写真の腕のせいでシズル感が出ないのが残念すぎる。本当はもっと美味しそうだし美味しいです。私、10食限定にひかれてつい注文しちゃったけど実を言うと普段はちらし寿司そんなに好んで食べる方じゃないんですが、酢飯もいい塩梅で、特に散らしたイクラの食感が素晴らしかったー。煮物や揚げ物や焼き物の類も、上品な味付けで美味しかったです。

デザートはお月見プリン。見た目ではわからないのですが、葛粉でも使ってるのかなぁー。ちょっと食べたことのない、少しもっちりした不思議な食感のプリンでした。これにコーヒーがつくのですが、私は日本茶にしてもらいました。

12時ごろから予約の人含めてちらほらお客さんが入り始めてましたが、席数はそこそこあるので余裕があります。お料理もですが、サービスもとてもよくて、これは覚えておきたい大人のお店だなぁーと思いました。またこっちの方に来ることがあったら絶対寄りたい。ボーナスでも出て奮発できる時に、夜も来てみたいなぁ。

早めのランチを堪能して、北浦和に移動。堀江敏幸さんの無料講演会があったので、まずそちらを目指します。

開場時間ぴったりに到着したので、サクサク入れましたが、だんだんお客さんが増えてきて、定員100名のところ7〜8割は埋まってたんじゃないかな。

堀江さんの講演は、学芸員さんの作品解題とは趣が違って、主に堀江さんが古本屋さんで買い集めた駒井哲郎装幀の本のスライド写真を見せながら、「箱から出した時の高揚感…」とか「帯をかけるとこういう感じになるんですが、このバランスがすごくいいんですよね」とか「カバーを剥がすと、こんなところにこっそり中表紙と同じ絵があしらってあるのです…!これは図書館でべったりカバーが貼り付けられている本では見られません。買った人だけの特権です…」的な話を、1時間半にわたり熱く語り続けるという活字本オタクトーク会だったので、私はめちゃめちゃ面白くて悶絶しそうでしたが、美術の話を期待してきたお客さんがどう思ったのかは正直わかりません…(汗)

でも、最初は戸惑い気味の雰囲気のあった会場が、途中からどこか暖かい目であらぶる古本オタクを見守る的な雰囲気になってきてて、よかったです。結果的に、なんかいい講演会だったのではと思います。

実際、駒井哲郎はずいぶん多くの本や雑誌の装幀、装画を手がけていて、会場にもその一部が展示されていましたが、堀江さんが見せて下さった雑誌の目次のページのイラスト・レイアウトやなんかも、いい仕事なんですよね。とにかく色々引き受けていた人なので、雑誌なども含めた装幀作品の完全な目録は出来てないそう。美術史科の学生さんとかが出版社の図書室あたりで調べまくって目録作ったりしたら、面白いかもしれません。

展示の方は、講演会から出てきたお客さんたちが入っていたのでこの会場にしては混んでいましたが、でも上野の都美術館あたりの混雑に比べたら超快適に観覧できます。近くで見たり遠くで見たりしたい派なので、久しぶりに芋洗いじゃない会場で、好きなペース・好きな順序で絵がみられて楽しかった。

チラシなどを見て想像していたよりどの作品も小ぶりで、緻密な線に驚きました。作風はとにかく最初期から安定していて、できあがっちゃってます。デッサンも確実で、いわゆる「最初から描くべき線が見えてる」タイプだと思います。

30代でフランスに国費留学して、本人はめちゃくちゃ自信喪失して精神的なクライシスも経験してるんですが、そういうのが作品の前面に出るタイプの作家ではありません。白黒の版画なのに、寝室に飾ってもいいなーと思えるような、穏やかな安定感があります。

これなんか、じーっとみてたら安眠できそうじゃありません?

白黒だけの世界の版画って、作る人によってはおそろしく不安感をそそるんですが、この人のは違う。人柄なんだろうなーと思います。例えば↓のヴァロットンとか、好きだけど寝室には飾りたくならないもん。

こういうあまり押し出しの強くない画風も(とは言え無個性ではない)、装幀や装画の仕事に向いてたんだろうなと思います。自分の作品の上に文字をのせちゃうことなどを嫌う作家は当然いるわけで、そのへんのことに関しては淡白だったのかな、とも思いました。版画家という職業が、画家と職人の中間点ぐらいの職業である、という特性からくるものかも知れません。

樹木はとても好んだモチーフだったようです。ふんわりとした抽象画のタッチとは異なり、緻密なエッチング作品。

お魚も好きだったみたい。イワシの頭みたいなモチーフも多いです。

面白いなと思ったのは、駒井哲郎の作品は単体だとものすごく安定していて閉じていて、ほっとするけど人によっては面白みがないな、と感じるかも知れない作風なのですが、これが詩画集などになって、人の言葉と一緒に置かれると、途端に「開かれる」感じがあるんです。想像力を掻き立てるというか、言葉との相性がどの作品もすごくいい。

こういうのって、文を読んでから絵をつける場合と、絵に詩人がインスパイアされて文をつける場合があると思うんだけど、そのどちらであったとしてもしっくりくるような、血液型で言うと(誰にでも輸血できる)O型みたいな作品だな、と思いました。

埼玉近代美術館って、素敵なモダンデザインの椅子のコレクションがあったり(←自由に座れる)、わりといい企画展やってたりするんですよね。前に行ったのはワイエスだったかなぁ…。しかも、収蔵品だと絵ハガキは30円とか60円とかなんですよ!がっつり150円とかとる美術館も珍しくないのに、なんて良心的なのだ。

↑これ、コレクション作品なので60円。

素敵な割烹ランチにも心惹かれるし、また何かいい企画展があったら来ようと思います。駒井哲郎展は始まったばかり。お出かけになる方は是非、新のランチとあわせてお楽しみください。

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