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住 | しんどかったからパジャマを畳むようになりました
朝起きて寝ぼけ眼で支度をしてもうあと2分で出なきゃ!と言う時でも、わたしはパジャマを畳んで出かける。余裕があればベッドメイクをしてテーブルの上を片付ける。これをやるようになったのは、半年くらい前に見かけたとあるポストだった。
昔、おぎやはぎのラジオ番組で「明日死にたい 生きててもしょうがないみたいに言ってる女の子にお坊さんが人は変われるんですよ、と教えてたんだけどその中の1つに"朝起きて、まずパジャマをたたむところから始めなさい"ってのがあってね」と続く話があったのを、今でも鮮明に覚えてる
なんとなく目に留まったポストだった。正直すごく感銘を受けたという感じではなく、どちらかというと「明日死にたいと思っている人間がパジャマなんて畳めるのだろうか」と思ってしまったぐらいだった。おそらく毎日丁寧な暮らしをしていれば、死にたいという気持ちもなくなっていくという話だろうと勝手に解釈していた。
ふぅんとしか思わなかったのに、なぜわたしの心に留まったのか。それは当時わたしがほんの少し生きるのがしんどかったからである。
仕事も恋愛もうまいこといかず、自分の中で限界を迎えていた。心がすり減るような毎日で泣いて泣いて、でも誰かに面と向かってその弱さを見せることがたまらなく恥ずかしくて、抱え込んでは溢れさせる日々だった。
そんな中で目に留まったのがあのポストだった。パジャマひとつ畳んだところで何が変わるんじゃと、半ばヤケクソ気味にわたしは出勤前に脱ぎ捨てたパジャマを綺麗に畳んでみた。そして気づいたのだ。帰ってきてパジャマが畳まれていると嬉しいということに。
くたくたになって帰ってきた部屋に、朝わたしが畳んだパジャマが綺麗に置いてある。それだけでなんだかとても偉いことしたような気分になり、「おつかれさま」と言われているような気がした。自分のためにパジャマ畳んであげたんか、わたしは。なんて偉いのだろう。と褒め称えたくなってくるのだ。
そして雑談とした部屋にぽつんと綺麗なパジャマだけが置いてあることに違和感を感じ、時間に余裕があれば少しだけ部屋を整えて出かけるようにした。そうすると帰ってきた時にとにかくほっとできるようになった。
あのポストの話のお坊さんが女の子に伝えたかったのはこういうことではないかもしれない。けれどもわたしは「自分のために何かしてあげること」の尊さを学んだ。しんどくても帰ってきたら部屋は整っていて、パジャマはわたしのために綺麗に畳まれてある。わたしの頑張りも辛さもわたしがちゃんと分かっている。そう思えてくるのだ。
もちろんバタバタして畳めない日もある。部屋も片付けられない日もある。でもそれでいいと思う。完璧にやろうとするとかえって疲れてしまうから。
こうしてわたしはほぼ毎日パジャマを畳んで、ベッドメイクをして出社するようになった。しんどくなることなんて毎日山のようにある。それでも帰ってきたらパジャマが畳まれているだけで「うわーん今日も頑張ったよお」と肩の力が抜けるのだ。
たかがパジャマを畳むだけだが、自分のために何かしてあげるというのはこんなにも心嬉しくなるものかと思う。丁寧な暮らしとはこういう些細な「自分に優しくあること」の積み重ねなのかもしれない。