最大のリスクは、「人生を後悔すること」;「後悔」の哲学、三木谷浩史を中心に(1/4)
「現代社会において最大のリスクは、「人生を後悔すること」だと思うんです。金銭的なリスクなんて、ある意味、大したことはない。」
三木谷浩史は、楽天グループの創業者である。彼が人生で何より大切にしてきたのは「後悔しないこと」だった。常に全力を尽くし、将来を後悔しないよう生きることを説いてきた。
三木谷の「後悔しない」という哲学は、もともと強い出世志向を持っていた彼が、ハーバード留学と阪神大震災を経験したことから芽生えた。
銀行とか商社とか大企業が日本を変えたり、社会を作っていくという時代はもう終わった。これからはむしろ個人や中小企業が、既成事実を積み重ねて新しい社会を作り、日本を変えていく。
三木谷は若手行員時代、日本興業銀行(当時)での出世を目指していた。ベンチャーという言葉さえ知らなかった。しかし、91年から2年間のハーバードビジネススクールへの留学が、彼の価値観を大きく変えた。ハーバードの同級生たちは起業に価値を置いており、大企業の幹部になることには重きを置いていなかった。大企業で出世するのがビジネスの王道だと思っていた三木谷にとってはそれまで考えてもいないことであった。会社を起こす。それこそがビジネスなんだと、気づいたのだった。
さらに95年、阪神大震災が発生。三木谷は神戸市須磨区で、幼少期に可愛がってくれた叔父、叔母の遺体と対面し、友人も3人失った。この経験から、彼は「人はいつか死ぬ。人生は有限だ。残された時間は少ない」と痛感する。
大震災の翌日、焼け野原となった故郷の風景と、毛布もかけられずに並べられた500もの遺体の列を目の当たりにしたことが、三木谷の価値観を大きく変えた。「このままでは後々必ず後悔する」と悟り、興銀を辞め、起業家の道を歩むことを決意したのである。
この世に存在するあらゆるものはいつか滅びる。ビジネスに取り組むなら、いつも腹の底で、この覚悟をしておくべきだ。
こうして培われた三木谷の「後悔しない」哲学は、今を全力で、そして着実に進むことにある。それは「汗をかく」「ゴール志向/ストレッチされた目標」「具体化」の3つの要素から成る。
第一が「汗をかく」である。三木谷は「リスクを恐れずに全力を尽くせ」と説き、行動することを常に促した。「汗をかかなければ、後で後悔するだけだ」と熱心に訴えかけた。
第二が「ゴール志向」である。高い目標を掲げ、常にそこを意識することが重要だと考えた。「小さな夢なら誰でも描ける。でも大きな夢を持つことで、大きく飛躍できる」
第三が「具体化」である。抽象的な夢ではなく、具体的な行動計画を立てる必要があると説いた。「夢は具体化されて初めて意味を持つ」と語り、着実にビジョンを実現する手順を示した。
三木谷の「後悔の哲学」が際立つのは、"行動すること"を何よりも重視した点である。目標を立て、具体的な行動計画を描き、その実現に向けて全力を尽くす。この一連のプロセスを欠かすまいとする姿勢が卓越していた。
実行することを重要視する姿勢は後に紹介する柳井正(ファーストリテイリング創業者)も同じである。柳井が失敗することの恐怖を克服せよと説く一方で、三木谷はいつかなにかが終わってしまうという宿命に突き動かされている。
三木谷浩史は、楽天グループの創業者である。彼が何よりも大切にしていたのは「後悔しないこと」だった。常に全力を尽くし、将来を後悔しないよう生きることを説いてきた。
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”若い人は残り時間がたくさんあると錯覚しているけど、いつ死ぬかはわからない。明日死ぬかもしれない。それなら今日が最後の日だと思って、行動するべきです”
柳井正