試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。
試着室を舞台にした、いろいろな女性の成長物語。短編ドラマを見ているような感覚でサクサク見れるため、とても読みやすくあっという間に読破。一つ一つが短めなためライトに読めます!でも一物語読み終わる毎に、胸がジーンと熱くなったり、共感できたりします。
私は、アパレルでお仕事させていただいているのもあって、服には沢山触れて生活をしております。
この主人公の方のように、明日のデートのために、明日の友人との約束のためにと目的があって買いに来るお客さまは数多くいらっしゃいます。
「あしたの服を悩むのは、あしたを夢みるからなんだ」
デートの前日、何を着て行こうか全力で迷っている、明日が楽しみでたまらなくなる瞬間。
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以前、ご年配のお客様(70代)がご来店されて(うちの客層は20〜30代)、「私にも着れるお洋服あるかしら」と唐突に相談されたことを思い出しました。
初めは、強張った表情で緊張していたお客様も試着を繰り返し、ご提案したミント色のシフォン生地で、袖のところがくしゅくしゅっとバルーンなシルエットになっているブラウスを着て、「これなら喜びそう」と笑みをこぼして優しそうにおっしゃいました。
このお客様は、次の日に、30年前に死別した夫の命日にお墓参りに行くそうで、「少しでもさようならを告げた日に近づいた姿で会いたい」とおっしゃっていました。
___少しでも綺麗に思ってもらいたいのよ
___若い時に着ていたような鮮やかな色の服は持ってなくてねえ、
___昔は可愛いお洋服着て沢山デートしたのよ?
___貴方も沢山デートしなさい
ご来店された時の強張った表情とは打って変わって、明日に夢をみる、恋する女の子のようなキラキラと輝いた目は本当に素敵で、私がアパレルでお仕事してよかったと思えた瞬間そのものでした。
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どんなお客様でも最後に出口で紙袋を渡す時、
必ず、その日1番の笑顔で「お世話様でした、ありがとうございました」とおっしゃいます。
この試着室で着替えるお客様は、何を考えてこの鏡と向き合っているのか。誰を思いながら、この試着室で新しい服に着替えるのだろあと思うと、こんな幸せな瞬間をお手伝い出来るなんて素敵なお仕事だと改めて感じました。
「着る服が本来の自分の良さを引き立ててくれる」
この本に出てくる私の好きな言葉です。
ありのままの自分を愛していいんだよ、と伝えてくれるそんな素敵な本でした。
是非。