おはしセット
私がいつも家で使っている、お箸と、スプーンと、フォークは、特別なものを使っている。それは、次女の、幼稚園の時の、おはしセットである。
つまり、次女のお下がりを、使っている。
しかも、それを、私は、好んで使っているのだ。
家内は、こう言うのだ。
恥ずかしいから、もう、やめたら。
だが、誰に恥ずかしいのだろうか。
そして、誰が、恥ずかしいのだろうか。
私は、なんとも思わない。
そして、ずっと、使ってきた。
ところが、ハプニングが起きた。
ちょっと硬い肉をつかもうとして少し力を入れたところ、なんと、セットで折れてしまった。
実は、このお箸は、2代目である。
本来のセットは、Mezzo pianoだったのだが、見ていただくとわかるように、Daisy loversに、一度、変えている。
プラスティック製のお箸は、長年使っていると、脆化して折れやすくなる。
私は、ちょっと、考えた。
もう、新しいおはしセットを購入しようか。大人用の。
実は、この、裏側にに、次女の名前が、マジックで書いてあった。
私が使っている間に、消えてしまったのだ。
私は、子供の名前の書いてあるものは、やはり、捨てられない。
思い出も、思い入れも、あるのである。
そこで、お箸を買い足すことにした。計測してみると、約16cmである。
その日は、テレワークをしていた昼休みだったので、すぐに、100円ショップに向かって、お箸を購入した。
購入したのは、15cmのものだが、この上の長さは、16.5cm だったので、こちらを選んだ。
ちょっと、お箸は、短かかったようだ。
まあ、いいだろう。
帰宅した家内に、このセットを見せたら、こう、言った。
あら、おはし、折れちゃったの。
可愛いおはしだね。
心の中の、リトルkojuroが、安心したように、ゆっくり呟いた。
あんなに、恥ずかしいとか、むかし、言っていたけれど、毎日使っていたら、もう、気にならなくなったんだね。
どっちかというと、こっちのほうが、恥ずかしいんだよな。
家内は、捨てられないのだ。お箸が。
古くなってしまったものも、ずっと、溜め込んでいる。これでも、半分以下に、減らしたのだ。
家内は、言う。
いやいやいや。必要なのよ。
これが全部、出払っちゃうことだって、あるんだから。
心の中の、リトルkojuroが、小さな声で、囁いた。
何人家族だよ。この家。
私は、こういう混沌から独立するためもあり、おはしセットを、使っている。
食事が終わったら、自分で洗い、自分で片付ける。
自分のことは、自分で、やる。そして、できる限り、割り箸や、プラスティック製のスプーンやフォークは、使わない。
我が家は、家内が納得しないと、物が、片付かない。
そして、平素は、家内が笑っていれば、我が家は、平和なのである。
いずれ、断捨離を、決行する意思は、かたく、決めてある。
でも、それは、今ではない。
今は、いいのだ。
これで、いいのだ。