
過ち
今日は、身につまされる話を、ひとつ、しようと思う。
7月の末に、次女の部屋にエアコンを購入した。
次女は、もと、長女の部屋に、今は、いる。私の住んでいるところは、東京の西のはずれに位置していて、都心よりも、2,3℃温度が低い。風がよく通るし、北の部屋は直射日光が当たらないので、長女は、窓を開けて扇風機で我慢していた。
長女は、その生活を、高校、大学の7年間、貫き通した。そして今は、独立したが、比較的涼しい地域に住んでいて、いまだに冷房をほとんど使わない。
次女は、大学の運動部に所属している。1年、2年と我慢していたものの、今年の夏は、猛暑で、どうにも我慢が出来ないのだと、強くエアコン購入の要望を出してきていた。
7月の末、家内と何度も相談し、電気店にも足を運んで、エアコンを選んだ。
そして、最後は、性能と金額で選んだのだが、そのエアコンの設置時から本当に、いろいろとあった。
取付の日、私は帰宅が遅くて。家内しか家にいなかったのだが、家内が、いろいろと、その量販店とやりとりをしてくれたのであるが。
列記してみる。
【1】約束の時間に、なかなか来ない。繁忙期だとは言え、かなり待つことになった。
【2】そのうえ、量販店に帰る時間があるので、工事をする時間がなく、別の日に工事をすると、工事業者が言い出した。
【3】購入の決め手は、早く工事を済ませたくて、希望の日程をまっとうするならば、という、前提で、購入を決断したにも関わらず。
【4】しかも、工事会社に聞いたところ、それは、その量販店の指示で、帰社時間に制約を設けているらしく、不条理だ。
【5】現場調整の費用が、当初の説明と違い、かなり要求されたので、話が違った。
ここまでは、量販店とのやりとりで、なんとか調整してもらい、事なきを得た。が、使い出してから、不審なことがいくつか発生した。
【6】風が排水ホースから入ると、室内機がポコポコいうので、その風よけをつける約束だったが、工事業者が不要だといってつけなかったにも関わらず、室内機がポコポコいう。
【7】後日、風よけをつけたが、まだ、ポコポコ言い続けている。不良品なのか、施工不良なのか、分からない。
【8】外に風が吹いていないのにも関わらず、また、冷房を稼働させていないにも関わらず、室内機が、ポコポコいう。おかしくないか。
【9】ドレーンホースから、通常、水が出るが、どうも、出ていない。どうしてか、不安だ。
【10】この、ドレーンホースについては、排水口を、水とガスの計量メーターハウスに繋いでいて、そこから排水していることが判明した。が、それを説明しないことにも、不信感を抱く。
【11】冷房の効きが悪く、設定温度20度程度にしないと、部屋が冷えない。不良品なのかと思う。
なんだか、気分が悪くなってくるほどの、不信感である。これはすべて家内がかんじたことで。私に確認してきて。終いには、私を叱責するような感じで、言うのである。
私は、いろいろな話を聞いていて、なんだか、自分が悪いような気がしてきて、下を向きながら、はい。はい、と、生返事を繰り返した。
家内は、こう、私に、言った。
もう、コジくん、しっかりしてよっ!
心の中の、リトルkojuroが、うつむきながら、つぶやいた。
はい。
私が悪うございました。
これは、典型的な、クレームになるパターンだ。もう、家内は、その量販店に、不信感しか無い。
そもそも、その量販店の担当営業というのが、身だしなみが、いまいちだった。そこから始まり、【1】〜【4】で、話が違うじゃないかとなり、【5】で、完全に、こりゃダメだ、と、なった。そこから先は、釈然としないことはすべて、「おかしい」という不信感に繋がっている。
私が、購入の、最終決断を、した。確かに。でも、私からすると、値段が安いとか、工事日が、希望の日であるとか、もちろん、いろいろな判断基準があったが、最後の決め手となったのは、日本製である、ということだった。
日本の工場で、作っている。静岡工場で。
別に、海外製を、良くないと言っているのではない。だが、今や、家電製品がほとんどといって良いほど、海外生産に移行されている。そんな中で、日本で工場を稼働し、雇用を生み出し、設計から生産まで日本でやっている、正真正銘の、メイドインジャパンの健気さを、私は、応援せずには、いられなかったのである。
この話をすると、家内が、言った。
コジくん、この際、メイドインジャパンは、良いのよっ!
しっかりしてよっ!
心の中の、リトルkojuroが、嘆きつつ、つぶやいた。
えっ?俺が、しっかりしないといけないの?
このメーカー。実は、私は、好きなのである。家内も、嫌いではない。だが、おそらく、その量販店には、もう、行かないだろう。
すれ違いとは、恐ろしいものだ。
家内の、今回の購入の、一番のこだわりポイントを踏み外したのが、命取りだった。
それは、この日に取り付けを完了する。という、"設置日"だった。
家内は、購入の時に、念押しで、こう、発言してまで、いたのだ。
工事屋さんも、繁忙期で、来るのが遅くなるのは、大丈夫です。でも、どんなに遅くなってもかまわないから、その日につけられるならば、購入します。
その日は、長男が、出張帰りに帰宅してくる日だった。
その長男と次女が遅くまで語り合っているであろう次女の部屋に、少しでも涼しい風を、送りたかったのである。親心として。
この、家内の、覚悟と決意に、その量販店の担当が、軽く、ハイハイと言って聞き流し、必要な手続きと注意事項を怠ったのが、すべての過ちの始まりなのである。
この話、全く、他人事ではない。
お客様への提案。人とのお付き合い。その人が、どういうことを望んでいるのか。こだわりは、何か。
ここをきちんと捉えるのが、営業の基本というよりもむしろ、人としての心遣いというものなのだろう。
この出来事は、単なる悪口や文句の話ではない。他山の石として捉えずして、どうするかと、かなり真剣に思った。
そして同時に、何とか家内の不信感を拭い、ことをおさめる手立てを講じなければと思った。
身につまされる、出来事だった。