当たり
9月の最初の金曜日、帰宅するなり、荷物が届いていて驚いた。
荷物が届いて驚くなんてことは、そうそう、あるわけではないが、これは、驚いたのだ。
送り主が、北陸名糖と、なっている。
つまりは、まさか、当たったのか?
大きな声を出して、騒いだので、キッチンの家内が、私を叱った。
リキくんが、驚いてしまうよ!
心の中の、リトルkojuroが、すまなさそうに、つぶやいた。
ごめん、ごめん、リキ。
少し震える手で、慌てて、箱を開ける。
やったぜ!当たった。とうとう、当たった。
家内が、飛んできた。
そして、少し感心して、眺めてきた。
へえ、当たったんだ。
どんな感じ?
ちょっと見てみる。
へえ、なかなか、可愛いじゃん。
私は、すかさず、言った。
パジャマにしないでね。
家内は、ケラケラと笑った。
私は、続けた。
これと、3密Tシャツを着て、ペアルックで、星野リゾートに行くんだから。
心の中の、リトルkojuroが、嘆きつつ、つぶやいた。
ペアルックとは、死語だな。もう。
確かに。
でも、放っておいたら必ず、パジャマにされてしまう。だから、気をつけねば。
でも、家内は、広げて、つぶやいた。
なかなか、可愛いじゃん。
心の中の、リトルkojuroが、メモをとりながら、つぶやいた。
ほう。その言葉、覚えておいてね。
やがて、次女が帰宅してきた。そして、家内と私が話をしているのを聞きつけて、リビングルームにやってきた。
そして、Tシャツを見るなり、つぶやいた。
なかなか、可愛いじゃん。
心の中の、リトルkojuroが、写真を撮りながら、つぶやいた。
ほう。忘れないでね。その言葉。
続いて、次女と待ち合わせて一日帰宅してきた長女も、続いてリビングルームに入ってきて、Tシャツを拡げながら、つぶやいた。
思ったよりも、可愛いじゃん。
心の中の、リトルkojuroが、スマホで動画を撮りながら、つぶやいた。
よもや、忘れないでね。その言葉。
だが、瞬時に、こう、付け加えた。
でも、私は、着ないし。
あれ?
次女も、間髪入れずに、付け加えた。
私も、着ないよ。
おっと。
心の中の、リトルkojuroが、ガックリして、つぶやいた。
やはり、パジャマにされないように、監視しなきゃ。
家内は、何も、言わなかった。
鼻歌を歌いながら、晩御飯の支度をしている。
私と目が合った。
すると、すっと、脚を差し出して、指さした。脚を。
ミッション発動だ。
マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。
家内が、上機嫌だと、我が家は、明るくて平和になる。
だが、Tシャツが、パジャマに成り下がらないとも限らない。
だから、
マッサージは、入念に、やろう。
Tシャツを救うためだ。
心の中の、リトルkojuroが、苦笑いしながら、つぶやいた。
普通、抽選に当たったら、歓喜の渦じゃ無きゃ、おかしいよな。
どうしてこんなに、心配しなきゃ、ならないんだ?
コジと、他の家族で、こんなに、歓喜の受け止め方のギャップがあるんだ?
まあ、こんなもんさ。
今夜も、マッサージをする手がひとり、忙しなく働いている。
でも、
これで、いいのだ。
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