ご指導
家内とスーパーに行った。1月の末のことだ。私は、しみじみ、節分の豆を巡った、長男と家内の攻防をひとり笑いながら、思い起こしていた。
そんなとき、家内に声をかけられた。
今晩は、ここのお弁当にするわよ。だから、好きなものをとって。
でも、金額を、見てね。
そのとき、我が街のスーパーは、駅弁祭りをやっていた。そして、週末、その催しも最後に差し掛かり、売り捌きの時間になりかけていた。
私は、お弁当が入っているショーケースを見て、50%引きのシールがついたお弁当に目をつけた。そして、家内に声をかけた。
ねえ、これ、いい?
50%引きのシールも、貼っているし。
すると、家内から、ちょっと強烈な指導を受けた。
口を動かす前に、まず、カートの中に入れるッ!!
家内は、サッとそのお弁当を取り上げてカートの中に取り入れ、重ねて、私に指導をしてくれた。
どあうしても気に入らなかったり、他にいいものが見つかったら、また、そっと戻せばいいのよ。そういう気持ちで、まず、確保するッ!!!
わかった??!!!!
我が家では、スーパーに行く時間は、決まって、18時すぎ、いや、19時少し前くらいである。そして、その時間帯は、値引シールが、徐々に貼られていく。
我が家には、鉄の掟がある。
20%引はまだまだ。30%引は様子見。50%引でまず確保。
心の中の、リトルkojuroがクックッと、笑いながら呟いた。
忘れちゃいかんよ、まず確保。
ところがこの日は、駅弁祭りの終盤だった。さらなる新たなステージの幕開けである。
店員さんが、値引シール貼付機とカートを取り出し、値引き宣言をしたのである
店内は、一気に、騒然とした。
そして、私と家内を含めて、待ち受けていた人々が、一気に押し寄せた。
そして、カートは、一気に華やかになった。
家内は、満足気だ。
会計が終わり、週末帰宅してくるはずの長女の分のお弁当を確保して車に戻り、エンジンをかける段になって、家内が言った。
いい、コジくん。
50%は?
私は、反射的にこたえた。
まず、確保 ッ!!
家内は、満足そうに笑いながらこたえた。
はい。よろしい。
小志朗(我が家の車には、小志朗=こじろうという名前がついている)が、ゆっくりと、前に進み出した。
私には、タイヤのわずかな摩擦音が、笑っているように聞こえた。