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忘却
先週のことである。例によって、長男が出張でこちらに出てくるという。夜の便で向かうので、一晩帰省するからよろしくと連絡があった。
我が家は、過保護なので、家内は、仕事が終わってから、空港まで迎えに行く予定を立てた。
私は、家内と、たいていは一緒に行動する。そもそも、一緒に迎えに行こうとは、思っていた。
家内が帰宅して、私もその日はたまたまテレワーク。仕事を終えてから一緒に車に乗りこんだ。
すると、家内が言った。
あと4㎞だから。
ん?何が?
家内の顔は見たが、心の中で言った。そして、知識と情報を総動員して分析し、やっとのことで答えにたどり着いた。でも時間にすると、一瞬の事だったが。
そうか。ゾロ目か。4440㎞ってことね。
家内は、ニヤリとしながら、
そう。
と、こたえた。
おいおい。普通、そこまで頭は、まわらないよ。話す相手が、私で良かったねと、心の中で呟いた。
よしっ!
18時33分。出発。誤差無し!
もう、この掛け声も古いけれどねと、二人で思いつつ、でも仲良く唱和して、車を駐車場から出発させた。
計算すると、この辺だろうと予測を立てた。時間にして数分のことだった。
ところが、出発して、話をし始めてると、いろいろな事が話題に上がり、私と家内は、話に夢中になった。そして……。
あっ!しまった!!
家内がいきなり叫んだ。
ODOメーターは、無情にも、4449㎞を表示していた。
……。
3333㎞を見過ごして、またもや、4444㎞をも見過ごしてしまった。しかも、直前まで覚えていて、二人で意識して万全の体制で出発したのに……。
……。
あれだけ本題から外れた話題で会話が弾んでいたはずの車の中の空気が、一気に静かになった。
そんな雰囲気の中でしばらく車を進めると、また、家内が叫んだ。
あっ!!しまった〜!!!
今度のしまった〜は、なんなんだ?私は、驚きの表情で家内を見つめ、心の中で怯えながら呟いた。
家内は、ゆっくりと、吐露した。
アイスクリーム、冷蔵庫に入れ忘れた。
チーン……。
あたまの中で、音が鳴ったような気がした。
次女は部活で遅いので、家には、今、誰もいない。
空港で長男を乗せ、私たちの実態を話すと、
あれ?3333㎞見過ごしたときも、俺、乗ってなかった?
そうだ、そうだ。乗っていたよ。タセキング〜!と、私が言われたときだ。と、心の中の、リトル私が、相槌を打った。
それから長女のところまで遠征し、帰宅したのは、深夜。何とか日付変更線までに次女に電話でアイスクリーム救済の指示は出したものの……。
帰宅してすぐに、冷蔵庫の中を確かめた家内が言った。
まぁ何とか、食べられるかもよ。
おいおい。かも、とは、何?また、歪で美味しくなかったら、私の胃袋に頼るの?と、伏し目がちに、心の中で、そっと呟いた。