金持ちジュリエット【ショートショートnote杯⑨】
撃鉄が起きる音がして。冷たく固い銃口が、後頭部に触れた。
万事休すだ。
潜入捜査官は、静かに両手をあげた。
「なぜ分かったんだ。」
ビッグボスが言うに。公衆電話で本部への定時連絡にいったときに、土踏まずのコードネームを確認されてしまったらしい。
「516と、書いてあったぞ。小十朗、死ねっ!!」
バン!
「あれ?」
小十朗はすかさず、一本背負いでビッグボスを投げ飛ばし、手錠をかけた。
「クソッ!誰だ!実弾を抜いたのは!」
バタンとドアが開き、女が入ってきた。
「バカね。あんたのシマは、私が全部、買収したのよ。」
女は、サンダルを蹴飛ばし、土踏まずのコードネームを見せつけた。
「1008」
じゅう、りん、エイト。
日本語、中国語、英語。う〜ん。ややこしい〜。
「あっ、ジュリエット!伝説の!」
女は、高笑いを残し、突如現れた最新鋭軍用ヘリで、ビッグボスを連行し、瞬く間に飛び去った。
小十朗は、全ての後片付けを終え、1週間かけて本部に歩いて帰還した。