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浄水器
以前、こんな記事を書いた。それから何ヶ月経っただろうか。
この記事を書いた時期から勘定しても、4ヶ月以上経過している。今日は、ようやく、それが完了したという報告をさせて頂こうかと思う。
3月上旬のある日の、昼下がりのことだった。
私の目の前には、いつもの、マイクロテープが置かれている。
お疲れ様。コジくん。
今回のミッションは、ごくごく簡単だ。既に浄水器の交換用フィルターが手元に届いていると思う。そのフィルターの交換作業を実行して欲しい。
女王陛下のフィルター発注も、アラームが出てから数ヶ月経過してからだ。だがさらに、コジくんが億劫がって交換作業から逃げて、もう、半年近くかかっていると聞く。既に浄水器もほぼ機能していないに等しい。女王陛下も、たいそうお嘆きのご様子。本日中に、作業を完遂すること。
分かっているとは思うが、水を周囲に漏らしてしまったり、まして、作業が完結しないで挫折するような、エージェントにあるまじき行為だけは、決してしないように。
例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。健闘を祈る。
プシュ〜ッ
煙を上げて、マイクロテープは、消滅した。
今回は、とんでもなく厄介なのである。浄水器は、なんと、シンクの下の、めちゃくちゃ狭いところに無理矢理のように設置されていて。シンク下の引き出しを全て取り外し、さらに、その狭い空間に手と頭を突っ込み、浄水器をホースから水が漏れないように安全に離脱。フィルターを交換し、いくつかあるホースを間違わないように接続。そして最後に、引き出しを設置し、その中のものを元通りに戻す、という作業である。
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私は、マッサージをしなくなった分、家内と我が家に貢献するために、重い重い腰を上げた。
まずは、シンク下の引き出しのなかのものを、全て取り出して、引き出しを外す準備をした。
![](https://assets.st-note.com/img/1647240540569-OUowkUNQ8C.jpg?width=1200)
この、引き出しを取り外すのが、まずは、とても、厄介なのである。ゴリゴリ、でも、壊さない、傷つけないように、慎重に取り外した。
![](https://assets.st-note.com/img/1647240636189-aQ7l8jfdp2.jpg?width=1200)
そして、中の浄水器を確認。取り外し方法を取説で確認。浄水器が極端に狭いところに置かれているので、これを、水漏れの無いように安全にホースを取り外すのが一苦労。さらに、ホースと浄水器を取り外し、また、水漏れのないように安全にホースを取り付け直すのが、いちばんの山で。ここを乗り越えられる自信が、正直、無かった。
家内は、仕事が忙しい。だが、そもそも、忙しかろうがそうでなかろうが、こういう手間がかかる家事は、一切やらない。すべて、私が、やるのだ。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
まさか、不公平だなんて、思っていないか?
そんなこと、女王陛下(注1)に言ったところで、全くの無駄だがな。
私の遠い記憶である。私の浄水器を取り付けミッションも、大変だったのだが、それが終わった瞬間に、家内がこう言った。
こんなに大変な作業、ご苦労様。でも、こんなに大変だったら、交換作業も、コジくんの仕事だね。よろしく。
それを、思い出しつつ、半分泣きそうになりながら、ひとり、孤独に作業を行なっていった。
![](https://assets.st-note.com/img/1647241110662-CG9Xua5Z0S.jpg?width=1200)
何とか浄水器を外に取り出し、ヘッドをとると、制御部分が顔を出す。
![](https://assets.st-note.com/img/1647241205638-YcFRZA8SU7.jpg?width=1200)
古いフィルターを何とか取り出し、新しいものに交換。きちんと閉めて、また狭い置き場所に戻す前に、ホースをつなぎ直す。確か、赤が原水、青が浄水だったな。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
あまりにも辛くて、肝心要の、苦労した部分は、写真を撮っておく余裕がなかったね。
………。
そして、なんとか、ミッションが完了した。
ミッションが完了したら、熱いお茶で一服のはずだったが、汗だくで、手がプルプル震えていて、その余裕すら、無かった。
私の頭の中は、この言葉が、ずっと回っていた。
シンクの下に置くような、ビルトイン型の浄水器は購入するな。
そのとき、もう、夜も更けていた。
そして、ひとり、ため息をついた。半分は、疲れの。そしてもう半分は、安堵の。
家内は、あるプロジェクトに参画していて。仕事が忙しくて、事務所の側のホテルに寝泊まりしている。日曜日の深夜に戻り、月曜日の昼過ぎにはまた、ホテルに泊まりに行って、そこで仕事をしているのである。
マッサージは、とんと、しなくなった。そのかわりに、家内の健康の心配をしている。これならば、マッサージをしているほうが、よほど良かった。
心の中の、リトルkokuroが、ボソリと、呟いた。
マッサージ、やらないと、やっぱり、寂しいもんだね。
やりとりからすると、家内は元気なようである。
だから。
これで、いいのだ。
注1)女王陛下とは、家内のことである。私に、ときどき、ミッションを与える、指揮命令系統の最上位者なので、ときに、家内のことを、そう呼ぶ。