早送り
家内と、家内の妹が、きちんと、母の日の祝いをする人だということは、知っているのだ。だが、念のために、確かめたくなった。本当に、きちんと、お祝いを、しているのか、と。
そして、聞いてみた。すると、まずまず、面白い話を聞くことになった。
まあ、他愛ない、我が家の身辺雑記だが、家内から聞いた話を、そのまんま、書いてみようと思う。
家内は、今年は、母の日のプレゼントを何にしようと、いつも、行く、ヨーカドーの、パンフレットを手にした。
なかなか、良いメニューがある。そして、なんと、早送りは、10%オフだという。そこに家内は、目をつけた。
家内のこだわりポイントは、ポイ活と、クーポンと、節約である。そのこだわりポイントに、この企画は、まんまと、はまったのだった。
義妹とすぐに話し、そもそも、母の日は、連休のすぐあとで、忘れてしまう可能性が高いから、むしろ、早めに送ろう。それに、安くなるからと、話をつけた。
と、同時に、義母に、早く着くけれども、良いよねと、承諾も、とった。
心の中の、リトルkojuroが、感心して呟いた。
ちゃっかりしてるよな。
そして、滞りなく、ものは、お届け予定期間の一番早い日、4月23日に義母宅に届いたのだが、その日は義母は、たまたま、通院で家を留守にしており、宅配便の担当が、持ち帰った。
義母は、不在票を受け取り、受取日を確定しようと宅配便の担当に電話をかけると、最後に、その担当が、切り出した。
つかぬ事をお伺いしますが。母の日のプレゼントと書いてあるのですが、こんなに早くお届けしても、よいものなのでしょうか。
義母は、笑いながら、事情を話し、届け日を確定した。
翌日、荷物を届けに来た宅配便の担当は、義母に、言ったという。
変なことを、聞いてしまって、失礼いたしました。
義母は、届いたプレゼントが気に入り、LINEで写真を送ってきてから、お礼の電話を家内にかけてきた。
家内が、言った。
「さくらつきよ」、良いでしょ。
義母が、こたえた。
えっ?
「さくらもなか」と、書いてあるよ!
家内は、確かめてみる、ということで、ヨーカドーの、オムニ7の窓口に、メールを送付した。
すると、ほどなく、お詫びのメールが、返ってきた。
個人であろうが、企業であろうが、誰にでも、間違いは、ある。だが、その間違いに対して、適切な迅速さで、礼を尽くすかどうか。人としての、そして、企業としての品格は、そこにこそ、現れるのだと、私は、思う。
家内は、こうした一連のやりとりに、真摯さと丁寧さを、とても深く感じたらしく、また来年も、オムニ7を、是非とも使わせてもらおうと思ったという。
そして、家内は、こう言った。
最近、花の彫刻の時計とか、残るものばかりを送っていて。もう、そろそろ、終活をしなければならないのだと義母が言っていたから、生花のような、残らないものにした。
家内のこの言葉に、少し、誇らしく思った。
だが、この花。花をきちんと、処理すると、また、咲くらしい。
心の中の、リトルkojuroが、笑いながら、呟いた。
夫婦揃って、画竜点睛を欠く、だな。
花が、また、咲くというのは、決して悪いことではない。むしろ、喜ばしいことである。だが、手元に残らないものにするという、家内の思惑からは、少し、ズレてしまったようだ。
家内は、失敗には、長時間こだわらない。
明るい性格の人だ。
だから、私に顛末を話し終えて、上機嫌だ。
家内が上機嫌ならば、我が家は、明るく、そして、平和なのである。
だから、
これで、いいのだ。