時計
我が家には、電波時計がたくさんある。逆をいうと、我が家の時計は、すべて、電波時計である。
だが、少し窓から離れてしまうと、電波を受信できなくなり、時計が少しずつ、ズレていってしまうのである。
私は、時間が、いつも、気になる。正確な時間が知りたい。だから、いろんなところに、電波時計を置いているのだが、ほんの数秒、微妙にズレていくのが、妙に気になることがある。
でも、敢えて、数秒のことは、放っておいた。
しかし、今年に入り、春、一度、長男が帰宅したとき、その指摘を受けたのだ。
この家の時計、数秒ずつズレているのが、妙に気になる。気色悪い。コジは、気にならないの?
心の中の、リトルkojuroが、クビをすくめて呟いた。
コジに、言ってはならないことを言ってしまったな。
それで、一気に、私の心に、火が点いた。実は、一度気にしてしまうと、この手のことは、何とかしないといけない気になってしまう。
一度そうなると、行動に起こさねば気が済まない性格なのである。その熱が、冷めるまで。
普段は、いい加減なのに、あることがきっかけで、180度違う行動を、突然、起こす、厄介なタイプだ。
そして、こうなった。
少し気持の余裕のある、金曜日の夜。窓際から離れている時計を集め、電波を強制受信させる。
すると、15分もすると、こうなる。
そして、それぞれの場所に、戻すのだ。
毎週、こういう行為をしていると、家内が、ボソッと呟く。
コジくんは、変なところに、こだわるし、凝り性なんだから。
心の中の、リトルkojuroが、呟いた。
女王陛下(注1)も、こだわりポイントが濃いけれど、ね。
私の熱は、いつ、冷めるのか。これは、終生の、習性になるのか。それは、神のみぞ、知る。
家内は、こういう、流れになった時、私の粗を、次々に思い出すのだ。だから、先手必勝で、先に、謝っておいて、矛先を変えてしまうのである。
そうだね。変な凝り性は、だめだね。
ところで、ドラマは、観ない?
マッサージ、してあげようか。疲れているでしょう。
すると、家内は、途端に、上機嫌になった。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和なのだ。
だから、家内のことを、いかに上機嫌にしておくか、これが、私に残された半生の、最大のポイントなのである。
だから、
これで、いいのだ。
(注1)女王陛下とは、家内のことである。私に、ときどき、ミッションを与える、指揮命令系統の最上位者なので、ときに、家内のことを、そう呼ぶ。