ゾロ目逃し
我が家の車には、名前がついている。その名を小志朗(こじろう)という。
小志朗とのカーライフを、マガジンにしている。その中で、総走行距離がゾロ目になった瞬間を記念して、ゾロ目祭りというのを、やっていた。
だが、ゾロ目を見過ごすことが多く、それを、「ゾロ目逃し」という名称で、自嘲していることが、多かった。
また、11,111kmを超えると、そこから先は、11,111kmごとにしか、ゾロ目祭りは、やってこない。だから、苦肉の策で「回文数祭り」というのを作って、約1,000kmごとに祝おうということも、やろうと試みた。
だが、回文数祭りは、いい加減な我が家の流儀には合わず、家内も乗って来ず、ほどなく、消滅していっていた。
かたや、長女は、確実に、ゾロ目祭りを、1人で達成していて、その武勇伝は、家族LINEに都度、投稿され、家族からの賞賛を浴びていたのである。
9,999kmのときも。
その次の、11,111kmのときも。
順列の、12,345kmのときも。
そして、我が家は、もたもたしている間に、次のゾロ目祭りが迫っていることを、私は、薄々、感じていた。
でも、家内は、こう、言っていた。
まだまだ、時間は、あるから。
慌てないで。コジくん。
この夏休み、地元でいろいろあって、関西に帰らねば片付かなかった所要のために、一泊で弾丸帰省をしたが、そのときに、ゾロ目祭りは、やってきそうだった。しかも、帰り道で。
帰り道、高速に乗る前に、昼ごはんを食べた。そのとき、あと3kmだった。昼食を終わったら、スタンバイのはずだった。
ところが、満たされた満腹中枢は、千載一遇のチャンスを逃すために、存在しているらしい。
こうなった。
心の中の、リトルkojuroが、残念さで倒れそうになりながら、つぶやいた。
ゾロ目逃しの、達人たちだ。コジも、さっちゃん(注1)も。
家内が、その瞬間、こう言った。ゲラゲラ笑いながら。
あー。
あ〜〜っ!
私は、がっくり方を落としながら、こう、言った。
誰が悪いの?
家内は、こう、こたえた。
コジくんに、10,000点!
心の中の、リトルkojuroが、ツッコむように、つぶやいた。
いや、クイズダービーじゃ、ないし。
私は、口に出して、こう言った。
タ、セ、キ、ン、グ〜(注2)!!
過ぎた時間は、もう、戻らない。
空虚な気持ちで見上げた空は、微妙に、晴れていた。
(注1)我が家の家内の呼称は、「さっちゃん」で、ある。さっちゃんは、女王陛下という、別の呼称もある。だが、リキの関係で、「おばあちゃん」なんて呼び方は、まかり間違っても、しては、ならないのである。
(注2)タセキングとは、なんでも他責にする人のことである。私が勝手に作った、造語である。
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