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もみあげ
私は、毎月、家内の髪の毛を染める。家内のこだわりポイントは、ポイ活と、クーポンと、節約である。
美容院に行くと、お金がかかる。だから、家内が買ってくる、そのときなるべく安く購入できるヘアカラーを使い、髪染めをするのは、私の重要なミッションなのである。
このお役目、もう、何年になるだろうか。
もう、私も、かなりのベテランなのである。
そんじょそこらの髪染め人とは、ちょっと、違うレベルなのだ。
髪染めの時、汚れても良いように、もう、使い古したワイシャツを着る。
そして、付属の、ビニールの手袋をする。
私、失敗しないので。
心の中の、リトルkojuroが、静かにツッコんだ。
ドクターXかよ。
髪染めに、丁寧かつ、念入りにとりかかる。
時間をかけて、隅々まで。きちんと。
私は、こう見えて、ちょっとは、几帳面なのである。
さて。
終わったぞ。
タイマーで20分間計測。
家内が、お風呂に入った。
しばらくして出てきた。
洗面所の三面鏡の前で、確認している。
コジくん、今回は、ちょっと、ね。
もみあげのところを指差している。
見てみると、白いものが、混じっている。
.......。
心の中の、リトルkojuroが、笑いながら言った。
私、失敗してんじゃん。
家内は、節約家である。ヘアカラーは、常に、変わる。そのときの、一番、安そうなものを、買ってくるのである。
当然、混ぜ方や、塗り方、分量が、微妙に違ってくる。
そのたびに、説明書を読み、それにあわせて、髪染めをするのである。
これは、なかなかに難しいことなのだ。
だが、もう、ヘアカラーは、使い切った。
後の祭りだ。
失敗の後、項垂れて、お風呂に入った。
ふと思いついて、排水溝の蓋を開けると、ヘアカラーの泡で、一杯だった。
風呂上りに、家内に言った。
その、もみあげのところだけ、やり直そうか。
もう、ないじゃん。ヘアカラー。
いや。排水溝のところに、たくさん、ある。
冗談で言ったつもりだった。
家内は、凍えるような目で見つめ、私に言った。
あなた、失敗したのでっ!!!!
心の中の、リトルkojuroが、こっそりと呟いた。
驕れる髪染めも、久しからず。
来月は、絶対に、失敗しない。
そう、心に誓う、特別な夜になった。