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条件
我が家には、家内が設定する、長女、次女の、ボーイフレンド、ひいては結婚相手についての、厳しい条件がある。
列挙してみると、こうだ。
金髪、茶髪、ピアス、刺青、長い爪、挨拶、偏食。これらは、ダメ。そして、長男は、ダメ。
次女の、前のボーイフレンドは、いささか、この条件に反するところが、あった。
2点。
ちょっと、好き嫌いがあり、偏食傾向だった。そして、長男だった。
この、家内の条件は、まったく、家内の偏見だとは、思う。だが、家内は、この条件を、ことあるごとに、長女や、次女に、話していた。
心の中の、リトルkojuroが、ちょっと呆れて、つぶやいた。
条件を出すなんて、何様だろう。
長男は、ダメ。これは、まさに、偏見の中の偏見ではないか?今どき。
そんな、リトルkojuroの言葉など、家内は、聞こえていないし、意に介さない。
いまだに、この条件を、日々、言っている。
最近、次女の動きが、ちょっと、不穏になってきている。
家内は、ことあるごとに、この条件を持ち出し、こう、言う。
条件をハズレる者は、一切、受け付けないからね!
心の中の、リトルkojuroが、少し驚いて、つぶやいた。
我が家は、父親よりも怖い、女王陛下の決裁が無いと、ボーイフレンドすら、作れないようだ。
長女は、家内の性格を十分に知り尽くしているので、絶対に、ボーイフフレンドのことは、明かさない。そして、家内に、会わせない。
だが、要所要所で、家内には、概要だけ報告しているらしく、家内は、それほど文句は言わない。
ついでに言っておくと、長女は、絶対に、ボーイフレンドを、私には、会わせないらしい。私が、変わり者だから、というのが、その理由だそうだ。
心の中の、リトルkojuroが、寂しそうに、つぶやいた。
数々のミッションをこなしているのに、ねえ。
まあ、仕方がない。
普通は、娘なんて、父親に対して、そんなもんなんだろう。
次女の、前のボーイフレンドは、体育会の同じ競技ということもあり、家内は、懐柔策をとり、一時はそれが奏功し、我が家にもよく遊びに来て、私とも、仲が良かった。
だが、その関係が、一瞬にして消散し、ボーイフレンドは、私の前から、忽然と姿を消した。
家内は、今でも、長女や、次女に、ことあるごとに、ボーイフレンドの条件を、伝えている。もう、私は、完全に、耳にタコができた。
家内が、聞いてくるのである。私に。娘達のボーイフレンドの、条件を。
ねえ、コジくんは、どんな条件なの?
私は、さりげなく、こう、こたえている。
優しくて、思いやりのある人間。
心の中の、リトルkojuroが、笑って、つぶやいた。
コジ自身の、ガールフレンドの条件じゃあ、ないんだよな。
確かに。
家内は、ふふふ、ふふ、と、笑って。
それ以上は、何も言わない。
長男にしても、長女にしても、次女にしても。
彼らの人生は、彼らのものである。
だから、私が、どうこう言うものでは、決して、ないのである。
家内の設定する、ボーイフレンドの条件が、いいか、どうかは、別として。
我が家の娘達のボーイフレンドが戦うべき、最強にして、最後の、いわゆるラスボスは、我が家の女王陛下(注1)なのでは、なかろうか。
かわいそうに。我が娘たちよ。
女王陛下に、果敢に立ち向かう、勇者を、選べ。
だが、たとえその勇者たちが、女王陛下攻略の秘訣を、私に指南してもらいに来たとしても、私は無力だと、伝えてくれ。
心の中の、リトルkojuroが、ボソッと、つぶやいた。
それは、百も承知だと思うよ。
今夜も、ビールの代わりの、炭酸水が、身にしみる。
(注1)女王陛下とは、家内のことである。私に、ときどき、ミッションを与える、指揮命令系統の最上位者なので、ときに、家内のことを、そう呼ぶ。