コロコロ変わる名探偵【ショートショートnote杯⑦】
高彦は、困っていた。警部から、速彦の所在を確かめられていて。電話をかけても、こう、音声が流れる。
「おかけになった電話番号は、現在使われておりません。」
いつも、こうなのだ。電話番号が、コロコロ変わる。
高彦と速彦は、兄弟だった。高彦は、うだつの上がらない平刑事。速彦は、凄腕の名探偵。
「まだ、捕まらんのか?」
痺れを切らした警部が、荒々しく問いかける。
仕方が無い。高彦は、覚悟を決めた。テレパシーで、速彦を探すのである。そして、テレパシーで誘導し、事件現場まで連れてくる。そして、事件解決の依頼をする。
今日は、手術着を着て手袋をした外科医が現れた。
「やあ、名探偵。謎を、解いてくれ。」
「はいはい。解決すれば、いいんでしょ。」
速彦は、頻繁に電話番号を変え、常に変装をして雲隠れをしている。気に入った事件解決にしか手を出さないつもりだった。
だが、高彦のテレパシーには全く抗えず、いつも無理やり、ただ働きをさせられてしまうのだった。