台紙
以前記事に書いたのだが、この歳になってからやり始めたことがある。幼稚園から小学生低学年くらいの子供がやるものだ。一般的には。
それは、SAスタンプ集めである。
小学校の時に、これを毎夏集めて自由研究にしていた友人がいて。6年間やり続けて、とてつもなく素晴らしい家族旅行スクラップブックを作ったのである。
その根気と勇気に感服し、心の中で、ずっと憧れがあったのが、この夏、とうとう私をSAスタンプ集めに駆り立てた。
車で旅行をするときに休憩する、そのSAで、スタンプをゲットする。
だいたいは、サービスカウンターあたりにあり、そうでない場合は、出入り口に無造作に置かれていることもある。
あるサービスエリアで。祝日の、結構混雑する昼間の時間帯に。どうしても、そのスタンプが見つからないという事態に陥った。
サービスカウンターには、いわゆる、コンシェルジュがいる。きちんとした制服を着た、女性である。
誰かがスタンプの場所を聞いてくれないかなんて期待して、しばらく端から眺めていたのだが、そういうときに限って、誰もそう言う都合のいい親子は、出てこない。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
これは、自ら聞いて教えてもらうしかなかろう。
私は、意を決して、尋ねてみた。ひとりで。単独で。
すると、ちょっと、訝しげな表情をされて。言われた。
スタンプですか?
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
ええ、そうですよ。今、そう、言ったじゃありませんか。
あの、サービスエリアのスタンプのことですよね。
心の中の、リトルkojuroが、ちょっと苛立ちながら、呟いた。
ええ。ですから、あの、サービスエリアのスタンプですよ。
その、柱の陰にあります。
はい。ありがとうございます。
私は、くるりと振り返り、手帳に、スタンプを押した。
帰りに、柱の陰から顔を出して、笑顔で礼を言った。
ありがとうございましたっ!
コンシェルジュの女性は、にっこり笑って会釈してくれた。
車に帰って。家内と長女にこの話をしたら、笑われるよりも、ちょっと怪訝な顔で、長女には、こう言われた。
コジくん、外で恥ずかしいことをするときは、近くにいないでね。
そして家内は、女王陛下らしく、ミッションを出してきた。
コジくん、スタンプを押すための台紙があるはずだから、今度から、それをもらってから、押そうね。
……。
私は、御朱印帳ではないが、不要な手帳を持っていて。落書きや、メモや、こういうスタンプを押しているのだ。この流儀は、変えない。
夜は、ご多分に漏れず、マッサージとなった。
マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)女王陛下とは、家内のことである。私に、ときどき、過酷なミッションを与える、我が家の指揮命令系統の最上位者なので、ときに、家内のことを、そう呼ぶ。
■追記■
面ゆるって、なに?
それは、これ。西尾さんはじめ、みんな、面白い作品をあげていて。
私は、だいたい土曜日の夜に、そこそこの過去記事をあげています。
もしも、お時間があれば、みんなの作品、読んで頂けたら幸いです。