コースター
以前、こんな記事を書いた。これと同じようなことをして、日頃、忙しい長女は、人を動かし、そして、長女の元には、いくつもの、開けてみないと中身がわからないものを買ってきた。
今回、買いに行ったのは、次女である。
開封は、長女が帰宅したときに、次女も一緒にやっていた。二人で仲良く、ひとつひとつ、予想し、開封して中身を見て一喜一憂し、感想を言い合って、笑って、楽しんでいた。
長女が、私に言ったのである。
これ、要らないから、コジくんにあげる。
心の中の、リトルkojuroが、静かに呟いた。
コースターばかり、たくさんもらってもなあ……。
長女によると、フリマアプリでも売れるようなものでは、ないらしい。
そうこうしているうちに、慌ただしく、長女は、自宅に帰っていった。
だが、結果的に、私にくれるといった、コースターは、自宅に持ち帰ってしまった。
あれ?どうしてだろうか……。
心の中の、リトルkojuroが、呟いた。
ひょっとして、俺の声が、聞こえていた?
まさか……。
長女は、ああ見えて、鋭いところがある。
ひょっとしたら、もう、長女には、心の中の、リトルkojuroの存在が、バレているのかも知れない。
長女には、そのことは、敢えて、聞かないことにしている。
長女は、いつも、複雑なミッションを、突然、持ってくる。
そのたびに、私は、全身全霊で奔走するわけだが、長女は、無茶も言うが、幼い頃から、とても、優しい子だった。
例えば、私が、夜中に、足が吊って、イテテテと、声を出したら、寝入っていたのに、ガバッと起きて、叫ぶのだ。
コジ!
大丈夫なの!!!
あるいは、昔、まだ、長女が小学生の頃。
ある日、色々あって、会社の始業時間ギリギリになってから家を出た。当日は、私主催の、大切な会議を招集していた。早足で駅に向かい、改札の前で足が止まった。定期を忘れてきたのだ。
慌てて家内に電話をかけながら、引き返し、定期のありそうな場所を特定し、それを長女に駅まで届けてもらうことになった。
駅と家を結ぶ一本道で、私は、できる限りの早足で戻ろうとしていると、坂の上から、長女が全速力で駆け下りてくる。
そして、めちゃくちゃに息を切らしながら、私に定期券を届け終わると、言ったのだ。
コジ!
慌てないで!気をつけてね!!
行ってらっしゃい!!!
今でも、あの必死に走りおりてくる姿と、かけてくれた優しい言葉が、忘れられない。
私と家内の過保護は、子供たちの、そういう健気さに、裏打ちされているのである。
私は、大して成果も上げられず、出世とも縁遠いくせに、家庭をまったく顧みない、ダメな仕事人間だった。
それでも、家内や子供たちが、日頃は邪険にしながらも、ときに、何かと相手にしてくれるのが、とても、嬉しかった。
家内は、今日も、上機嫌だ。我が家は、平和で、明るい。
これで、いいのだ。