おしゃれ着洗い
洗濯に、そんな流儀があるなんて、知らなかった。洗濯機は、洗うものを平等に、放り込んだら勝手に洗い、すすぎ、乾燥してくれる。これが、全自動洗濯機なのだと、信じて疑っていなかった。
月曜日の朝、久々に帰宅していて朝食をとろうとしている家内に言ったのだ。
セーター、クリーニングに出そうと思うけれど、いいかな。
すると、家内が言った。
コジくん、それは、贅沢というものよ。
私は、セーターは、冬の1シーズン着る。そして、春になりシーズンが終了と同時に綺麗にして収納する。そういうものだと思っていた。
家内が、続け様に、言う。
いい機会だから、教えてあげる。
洗濯機でできるのよ。
取説の25ページを見てみて。
洗剤は、おしゃれ着洗い用でないと、ダメ。設定も、ここに書いてある通りにする。
それと、注意は、洗濯機が止まったらすぐに出して、干す。
オッケー?
はい。
そう言えば、棚の整理をしたときに、不思議な洗剤があったのだ。
ここまできて、言わなくてもいいのに、心が疼き出した。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
毎年、セーター、洗いもせず、クリーニングに出しもせず、出しっぱなしで3シーズン目なんだよな。
家内が、眼光鋭く、きっ、と振り返り、声を少し荒らげた。
余計なことを考えずに、やるっ!!
心の中の、リトルkojuroが、小さな小さな声で、呟いた。
我々の声は、きっと、傍受されている。気をつけろ、コジ。
しばらく通信を切る。
プッ………。
こうして、私のセーターは、3シーズン目にしてようやく、洗われることに、あいなった。
家内は、あるプロジェクトに参画していて。仕事が忙しくて、事務所の側のホテルに寝泊まりしている。日曜日の深夜に戻り、月曜日の昼過ぎにはまた、ホテルに泊まりに行って、そこで仕事をしているのである。
マッサージは、とんと、しなくなった。そのかわりに、家内の健康のことを心配をしている。これならば、マッサージをしているほうが、よほど良かった。
心の中の、リトルkojuroは、今、通信を切っている。
………。
やりとりからすると、さっちゃん(注1)は、元気なようである。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)我が家の家内の呼称は、「さっちゃん」である。さっちゃんは、女王陛下という別の呼称もある。だが、リキとの関係で、そもそもの飼い主が長男であることから、私は、おじいちゃんだが、家内に対して「おばあちゃん」なんて呼び方は、まかり間違っても、してはならないのである。