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ななこ

帰宅時。最寄りの駅で降り、喉が渇いていて、何かを飲もうと思ったのだ。そして、何の気なしに、最寄りのコンビニに入った。

炭酸水を探していたのだが、なぜだか、そのコンビニのブランドのものが無かった。そして、一般的な、炭酸水を持ち、レジに並んだ。

会計のタイミングになり、いつものように、いつもの言葉を言った。

nanacoで。


……。

一瞬、店員さんの言葉が詰まった。

そして、言葉が絞り出された。

nanacoは、取り扱っておりません。

え?

私は、一瞬、躊躇したが、私が間違っていたのだと気づかされた。

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最寄り駅は、駅の改札のすぐ横に、電鉄系のコンビニと、セブンイレブンが、並んで、ある。

そして、私は、セブンイレブンをよく使うので、勝手に間違えたのであった。


すぐに、店員さんに、謝った。


すみません。

そして、言い直した。

PASMOで。

店員さんは、少し苦笑いをしながら、言った。

こちらへ、タッチをお願いします。

ピッ。

会計が無事に済み、レシートが、出てくる。

それを受け取って、まじまじと、見た。

このコンビニに入るのも、久し振りだな。

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セブンイレブンが出来たのは、最近のことである。

こちらに越してきたときには、ここのコンビニしか、無かった。だから、いつも、お世話になっていた。

そう思うと、色々な思い出が、蘇ってきた。

長男と、都心の中学に、しばらくのあいだ、一緒に通ったこと。

冬の夜、暖かいものをここで買い、飲みながら、帰ったこと。

長女の受験のときの、カロリーメイト。

次女の、遠征のときのお弁当。

色々なものと、その時の思い出が、たくさん、思い起こされた。そしてそれぞれが、全部、懐かしい。


思い出に浸りながら、そして、少し良い気分になりながら、とぼとぼと歩いて帰宅した。もちろん、炭酸を飲みながら。

家に着くと、家内が迎えてくれた。

そして、少し良い気分で、その一連の話をした。すると家内は、笑顔で聞いてくれていた。

静かに。

でも、心の中の、リトルkojuroが、呟いた。

これは、何か、あるぞ。

お小言が。


私の話を聞き終わってから、家内が、静かに、私を諭すように言った。

コジくん、わかった。それは、懐かしい思いをしたね。

でもね。

PASMOじゃあ、ポイント、つかないよね。

少しでも、ポイント、つけるようにしようね。今後は、ね。


は、はい。


そうこたえるのが、精一杯だった。


家内のこだわりポイントは、ポイ活と、クーポンと、節約である。

家内は、でも、笑っていた。家内は、家内で、何か、思い出に浸っているように見えた。

家内が、笑っていて、上機嫌ならば、我が家は、平和で明るくなる。


だから、

これで、いいのだ。



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