カフェで覗いた老夫婦の日常
本屋に隣接したカフェに来た。
隣には老夫婦。
2階にあるそのカフェの窓側のカウンター席に座った私は、プレーンワッフルと珈琲を注文してから本と手帳を出して窓の外を見た。目の前には大きなビルがあって、その入り口にツリーが飾ってあった。
もうクリスマスか〜
そのツリーを囲むおばさまたち。代わる代わる写真撮影をして、遠いから小さすぎて顔は見えないのだけれど伝わってくるその人達の雰囲気は、色にすれば優しい黄色やピンク。
私の隣の奥様がポツリ。
「ツリーのところでおばさまたちが写真撮ってるわね」
奥様の隣に座る旦那様は、
「このソフトクリーム大きすぎるな」
「そうね、中にコーンフレークが入ってるわ」
「ああ」
話は噛み合ってないけれど、なんだかそんなお二人を素敵だと感じた。
目の前に運ばれる可愛らしいワッフルと艶のある珈琲。
オーソドックスな甘いものと合わせる珈琲が私は、好き。
「寒くない?」
「…」
「寒くなってきた…」
「そろそろ行くか」
全然知らない老夫婦の日常を盗み聞きさせていただいた時間。ほっこり胸が温まる。
最近は寝る前にベッドの上で布団に丸まってこの本を読んでいる。
群ようこ著『パンとスープとネコ日和』
まだ読み途中だけれど、好き。
日常の中に溶け込んだ素敵なことも少し苦いようなことでさえも全てが温かく柔らかく描かれていて、心が癒される。
今感じることは、時代や流行に影響されるのではなく、自分の「好き」を「やりたい」をブレずにすることが大切であるということ。それが幸せに生きることにつながっているのではないだろうか。
そんなことを考えていたら、老夫婦の日常の雲行きが怪しくなってきた。だんだんと言い合いをしている。何から始まったのか、隣で盗み聞きをしている私もきっと老夫婦ですら覚えていないだろう。
「もう私お金出さないから」
「はいはい」
そう言い残して二人並んで立ち上がる。
長年寄り添った夫婦の貫禄か。
お会計へ向かう背中を見て思った。
なるほど…
ふと横を見ると、旦那さんの隣(私の隣の隣の隣)に座る女性も同じく老夫婦の背中を見つめていた。
その女性は何を思ったのか。きっと年齢も私より一回りほど上のその方は、私とは違うことを感じているのだろう。
すっかり冷めてしまった珈琲を飲み干した。
そろそろ帰ろう。
つづく