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春という季節
SNSのアカウントを作り替えた。
作り替えた理由は別に些細な理由で、単純にめんどくさくなったから。
ただ、作り替えて真っ新な状態で始めるのも退屈だし、
消す前のアカウントのフォロー欄を見て仲の良かった人だけをフォローしていく。
電車の移動中にはちょうどいい暇つぶしにもなる。
「この人はこの前好きな音楽で盛り上がったな…」
「この人は会ってご飯行ったな…」
フォロー欄を見返していると、なんだか部屋の片づけをしながら思い出に耽るようで楽しい。
あらかた仲の良い人をフォローし終えたところで、
1つのアカウントが目についた。
大好きな人だった。
彼氏にしてもらえなくて、結局相手に好きな人ができて遠くの存在になってしまった人。
前は別のSNSも繋がっていたけど、彼氏ができたのか、単純に自分と関わる理由がなくなったのかブロックされてしまっていた。
アカウントを覗くと投稿はしていないが、いいねはしていてアカウントは動いているようだった。
電車に揺られながら彼女のアカウントを覗く。
今更フォローしたって…なぁ…
そう思いながらも何かに期待しながらフォローをするのだった。
もう終わった関係だったのも分かっている。
相手に他のSNSをブロックされたのが合図とすらも分かっている。
今更連絡してきて「遊んでよ」なんて言ってこないのも分かっている。
けど、フォローしなければ
繋がりが途絶えてしまうのが嫌だった。
次の日、また電車に揺られながら暇つぶしに自分のフォロー欄を見た。
大体の人からフォローが返ってきて、真っ白なアカウントに色がついていた。
だけど、好きだった人からフォローは返ってきていない。
アカウントを覗いて、いいね欄を見たら3時間前の投稿にいいねをしていた。
アカウントを見ていないということは無いみたいだ。
気づいていないのか、
それとも気づいたうえであえてフォローしてこないのか。
君とSNSで繋がっているだけなのに
その繋がりが消えるだけで君との繋がりが一切なくなってしまう。
どうしてもそれが怖い。本当に離れていく気がして。
今も君は僕の知らない人と笑って過ごしているんだろう。
幸せを感じているんだろう。
僕が知っているただ"いいねをするだけ"のアカウントじゃない、
別のSNSで君は僕が知らない今の君をみんなに共有しているんだろう。
電車に揺られながら君のアカウントを見つめる。
たちまち電車が止まり、ドアが開く。
僕は電車の外へ出てフォローを外す。
春を感じる暖かい風が吹いている。