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監査をうとまないで



はじめに

皆さんは会社で監査を受けたことはありますか?監査といって非常に多く、会計監査、品質監査、内部監査、製造所監査、法令監査など多岐にわたります。実際に対応したことある監査は法令監査、品質監査、内部監査、製造所監査です。実際に監査を行った人間として監査の重要性や監査がもたらすものについて書いていきたいと思います。

監査は煩わしい

監査には様々な種類があると書きましたが、監査を大きく分けると2種類に分かれます。監査の主体と監査の目的に分かれます。内部監査やISO認証監査は前者に分類され、会計監査や法令監査や品質監査は後者に分類されます。主体と目的で分かれていて、それを組み合わせて監査は実施されます。


監査の目的は定期評価などが多く、たまに疑わしい事象が多い場合に臨時監査が実施されます。定期評価は前回の監査での指摘事項の確認と変更点などの確認をメインで行います。臨時監査は不正や不備がないかを調べ上げるもので、定期監査とは雰囲気が全く異なります。監査は基本的に被監査者の同意が必要になり、行政などの無通告の立入調査や臨検とは異なります。監査を実施する前に通知書でどの業務範囲をどのような基準(法令、ISO規格など)で監査するかを事前に伝え、相手に準備してもらいます。これでは不正が隠蔽されるのではないかと思われるかもしれませんが、記録の不備や規定との齟齬で発覚することが多いので、隠蔽も至難の業です。正直に書類を出すほうが身のためですし、ない書類はないと正直に伝えるほうが後々楽になります。
監査を受けたことがある人は監査は煩わしいものだと思われているかもしれません。会社を良くするためとはいえ、協力するメリットを感じられない人が少なくないはずです。特に供給者監査のように取引先からあれをしてくれやこれをしてくれと言われる監査では非常に煩わしいと思ってしまいます。上からものを言っていると思われることは珍しくありません。その場合、監査員の態度が悪かったり、相手の言い分を聞こうとしなかったりする場合にそういった印象を抱くことが多いです。理想論だけで不備を指摘し、相手ができることのはるか上の要求をする監査員は少なからずいますし、現状やキャパシティーの理解が乏しいです。監査では理想の実現のために、現状からどのように改善すべきかを多少なりともアドバイスする必要があります。指摘事項でも「○○という規程に不備があるから是正するように」と伝えます。「これではダメ」のような指摘ではどこをどう改善すればいいのかが相手がわからないような指摘や建物などの改装を求めるような時間とお金がかかるような指摘はあまり現実的ではありません。改善方法までアドバイスする必要はありませんが、求められた場合にはある程度、答えられるようにしておく必要があるでしょう。指摘事項も単なる指摘ではなく、改善対応を見越した指摘をしたほうがいいと思います。監査員は指摘が仕事ではなく、一緒に改善することを考えることも仕事です。
このように監査員の態度や指摘事項への対処を丸投げするようなことが多いから、監査を煩わしいものと捉えてしまうのです。確かに監査の雰囲気は緊張が走りますが、その緊張を解くのも監査員の役目です。監査は思っているほど煩わしいものではないと思ってもらえると嬉しいです。

監査でわかること

監査の目的は不備を指摘することではなく、法令や社内規程などに沿って業務がなされているかを確認することです。不備を探すことに重きが置かれる場合は臨時監査の場合で定期監査の場合はそういったことはあまりありません。規程などから逸脱している場合は不備として必ず指摘します。規程と違うことをして、業務運営に支障がないと思われるかもしれませんが、そういったことが積み重なって不正が起こります。規程が現状にそぐわない場合はそれを改定する必要があります。内部監査の場合はそういったことを監査時に伝えると、会社の課題事項として規程の改定が挙げられるようになり、より良い制度にしていこうと進める会社もあるはずです。
監査で部内以外の人や社外の人から指摘されることによって、自分たちでは問題なかったことが実は不備であることに気づくこともあります。監査員は監査を専門にしているため、不備などの発見が非常に速いです。自分たちでは気づかないことを気づく機会であると考えると監査への意識も変わります。品質監査でよく言われることですが、ISO9001を取得しようとして、ISOの仕事ができてしまうといったことが起こります。本来ISO9001を完璧に運用できれば、業務効率の大幅な改善が図れますが、ISO9001を取得しようまたは取得したがためにISO9001のための仕事ができてしまい、ISO9001関連の仕事が通常業務に支障を来すことがあります。
本来、そういったことが起きないようにISO9001は存在するのに、中途半端な運用のせいで通常業務に支障を来してしまいます。こういったことからISO関連の監査はあまり関係のない部署で疎まれてしまい、そこから監査自体が疎まれるようになります。監査は会社や組織をよくするために実施するもので粗探しをすることではありません。粗探しをしても組織や会社がよくなるとは思えないですし、業務改善は見込まれないと思います。監査のための仕事が発生してしまう状態は、何かが中途半端な状態で、それを監査時に監査員も気づく必要があります。
そのために、監査員と他部署の人とのコミュニケーションが必要になります。内部監査であれ、外部監査であれ、このコミュニケーションが欠けると通常業務に大きな支障が生じます。内部監査の場合は監査員と各部署の人とのコミュニケーションが必要ですし、外部監査の場合は監査員と監査先企業の担当者とのコミュニケーションが必要になります。横の連携がしっかりとしていない監査は現実離れした理想を押し付けられることが多いです。

最後に

監査は面倒なことが多いと思われますが、被監査部門が監査の準備をしている間にも監査員も抜けがないように事前準備を入念に行っています。監査の通知をしてから監査までも監査員はずっとチェックリストの確認などを行っていますし、限られた時間でどこまで確認できるかを考えなければなりません。監査はする側もされる側もかなりの労力が必要になります。現場サイドの意向をあまり聞かない監査員は頭でっかちである可能性が高いですし、現場サイドの意見を吸い上げて経営層に伝えるいい機会を監査員自身が無駄にしているといえます。監査は悪いことを是正して、会社や組織を良くしていくことが目的です。その目的を忘れて、粗探しや監査のための仕事を作ってしまうようになってはなりません。相手に協力してくれという態度ではなく、自分からその姿勢を見せないと相手は動いてくれません。みんなで協力する姿勢を見せて、相手に協力してもらうようにしましょう。監査で見つかった不備は必ず対処しましょう。放置しているとそこから大きな損害を生むことになります。監査は改善の機会と思ってもらえるとする側としてはうれしい限りです。



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