乳酸性作業閾値(LT)ってなんだ?
前回は最大酸素摂取量について書きました。
一般ランナーにはここが一番逃げたくなる練習ですね。
だからこそ、練習会などに参加してみんなで走ることでチャレンジしてください。
今回は乳酸性作業閾値(にゅうさんせいさぎょういきち)についてです。
詳しいことはググってください。
噛み砕いてかきたいと思います。
簡単にいうと、レースを走っていて
「しんどいな。もうダメだ」
「いや、まだ頑張れる」
の境界線とでも言いましょうか。
ランニング速度の低い間は主に脂質が酸素と使ってエネルギー(ATP)を作り、この状態がいわゆる有酸素運動です。この時のエネルギーを作るのには少し時間がかかります。
一昔前、ダイエットで有酸素運動は20分くらいから脂肪が燃え始めると言っていたのはこのシステムから来ています。
その後、走速度を上げていくと酸素供給が追いつかなくなるため、糖を分解するエネルギー生成がメインになります。これは酸素を使用しないシステムで比較的早くエネルギーを供給できますが、乳酸というものが残りカスとして作られます。
以前は、この乳酸が疲労物質と言われていましたが、現在はこの乳酸のエネルギーに再利用されます。
しかし、ある地点で乳酸を再処理する速度が追い付かなくなり、乳酸が溜まっていきます。この乳酸が増加するポイントを乳酸性作業閾値と言います。
このLT値あたりがマラソンを走る上でのペースになります。
乳酸を除去しながらできるだけ速く走る。
長距離走においてLT値をいかに上げるかが1番のテーマとも言えます。
だから、前回最後に書いた
「ある実験では、最大酸素摂取量と記録との相関関係は市民ランナーレベルでは認められたが、アスリートなどのあるレベルを超えたランナーでは認められなかった。」
と言うところにつながってくるのです。
ではどのようなトレーニングが良いのでしょうか?
一般的には80〜90%の負荷でのペース走と言われています。
ジャック・ダニエル氏はTペースとして以下の内容を書いています。
快適なきつさのペース
練習で確実に20分~30分維持できるペース
十分に調整をしたレースで60分維持できるペース(エリートランナーのハーフマラソンペース)
十分にトレーニングを積んだランナーのVO2Maxの86~88%
同じく最高心拍数の88~90%
未熟なランナーでも最高心拍数の80%以上
VientoRCではおおよそですが、6kのペース走や10〜12kのペース走をLT値を高めるトレーニングメニューとして提供しています。
また、一般ランナーでビルドアップ走はよくやるトレーニング手段ですが、ダニエル氏はこんなことを言っています。
「私のテンポ走の定義は、一定の時間をTペースで走り通すというものだ。例えば緩いペースからTペースまで徐々にペースを上げていくような練習では、全体のうち本来のTペースで走った部分だけがテンポ走である。20分間安定してTペースで走る練習こそ、真のテンポ走と考える。」
要はビルドアップ走で徐々にペースを上げて距離を重ねても、LT値を高める効果があるのは、Tペースで走った距離だけである。
35年以上も前に小出監督が高校教員時代にペース走について同じような内容の手法をかけっこの職人芸という本に書かれていました。
小出監督のトレーニング理論を検証したら、結構面白いことが出てきそうな気がします。
結局のところ、ターゲットとなる運動強度を外さないというところが、どのトレーニングでも肝ですね。