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どの文学賞を受賞すると作家になれるの?② 純文学、エンターテインメント小説の文学賞

文学賞の運営は、出版社や出版社が出資している文学関連の財団法人などが主催者となることが多い。それぞれ独自の基準で作品を募集し、選考を行っている。

また、静岡県・静岡県教育委員会・伊豆文学フェスティバル実行委員会が主催している伊豆文学賞(最優秀賞100万円)や、岡山県・岡山県郷土文化財団主催の内田百閒文学賞(最優秀賞100万円)、愛媛県松山市主催の坊っちゃん文学賞(大賞50万円)など、自治体が実施しているものもある。

純文学の文学賞では、有力な文芸誌を持っている大手出版社の5つの賞が知られている。筑摩書房は文芸誌を発行していないが、文学全集に強みがあり『太宰治全集』を刊行しており、太宰治の名を冠した文学賞を持つ。


純文学を対象とする6つの文学賞

賞の名称     文芸誌   主催者(出版社)   賞金
文學界新人賞  「文學界」  文藝春秋      50万円
新潮新人賞   「新潮」   新潮社       50万円
群像新人文学賞 「群像」   講談社       50万円
すばる文学賞  「すばる」  集英社      100万円
文藝賞     「文藝」   河出書房新社    50万円
太宰治賞     -     筑摩書房、三鷹市 100万円

これらの賞の受賞を足掛かりに、次のステップの芥川賞を目標とする作家が多い。私が書いた小説は純文学ではないので、縁遠い文学賞である。

純文学に相対するのが大衆文学。娯楽小説とも呼ばれるエンターテインメント小説の文学賞についてもチェックしておこう。

娯楽小説などの大衆文学は、一般大衆の興味に訴える、娯楽的読み物として創作されたもの。当初は、1923(大正12)年の関東大震災前後に誕生した時代小説を指していた。

純文学と大衆小説の中間的な作品を中間小説と呼んだが、中間小説を含めたエンターテインメント小説は、その後、恋愛小説、ユーモア小説、探偵小説(推理小説)、ミステリー小説、ホラー小説、経済小説など、さまざまなジャンルの小説を生み出していく。

エンターテインメント界を支えてきた小説

純文学の公募型文学賞を創設している出版社では、文藝春秋、新潮社、講談社、集英社の4社がエンターテインメント小説の文学賞を創設している。

「野性時代」(現・小説 野性時代)を発行していた角川書店(現・KADOKAWA)、絵本や児童書に強いポプラ社、カッパ・ノベルスでヒット作を出して「小説宝石」を発行している光文社なども、文学賞を新設してエンターテインメント小説部門を拡大してきた。

ミステリー小説やライトノベルといった特定のジャンルに絞り込んでいない、ノンジャンルのエンターテインメント小説に対する文学賞を、以下にピックアップした。これまでに紹介した文学賞も再掲。

エンターテインメント小説を対象にする文学賞(ノンジャンル)

賞の名称         主催者(出版社)         賞金
日経小説大賞  日本経済新聞社、日本経済新聞出版社  500万円
小説現代長編新人賞    講談社           300万円
NOVEL DAYS×tree 長編文学賞「青春小説」 講談社     1万円
メフィスト賞       講談社             0円
新潮ミステリー大賞    新潮社           300万円
日本おいしい小説大賞   小学館           300万円
ノベル大賞        集英社           300万円
小説すばる新人賞     集英社           200万円
ポプラ社小説新人賞    ポプラ社          200万円
小説野性時代新人賞    KADOKAWA         100万円
角川春樹小説賞      角川春樹事務所       100万円
オール讀物新人賞     文藝春秋           50万円
別冊文藝春秋新人発掘   文藝春秋             0円
小説宝石新人賞      光文社            50万円
伊豆文学賞        静岡県、静岡県教育委員会、伊豆文学フェステ    ィバル実行委員会                   100万円
内田百閒文学賞      岡山県、岡山県郷土文化財団 100万円
北日本文学賞       北日本新聞社        100万円
やまなし文学賞      やまなし文学賞実行委員会  100万円
坊っちゃん文学賞     愛媛県松山市         50万円
さきがけ文学賞      さきがけ文学賞渡辺喜恵子基金 50万円
織田作之助青春賞     大阪市・大阪文学振興会など  30万円
阿波しらさぎ文学賞    徳島新聞社、徳島文学協会   30万円
銀華文学賞        アジア文化社「文芸思潮」   20万円
※賞金が0円のケースは、単行本になった場合の印税が賞金の代わりとなる。

新潮ミステリー大賞は、新潮社が主催する長編ミステリー小説の公募型の賞だ。なぜこの賞を「ノンジャンル」に含めたか。その理由を、賞の歴史を紐解いて説明しておこう。

新潮ミステリー大賞のルーツは日本推理サスペンス大賞で、1988年に創設され、主催は日本テレビ。新潮社は協力という立場だった。

江戸川乱歩賞(日本推理作家協会、講談社)、横溝正史賞(KADOKAWA)、サントリーミステリー大賞(サントリー、文藝春秋、朝日放送。1983年~2003年)に次ぐ第4の長編ミステリー新人賞であった。大賞賞金は1000万円。

日本推理サスペンス大賞は、新潮ミステリー倶楽部賞、幻冬舎とテレビ朝日とで共催したホラーサスペンス大賞、新潮エンターテインメント大賞へと受け継がれていくが、2012年に終わっている。

その後継として、新潮ミステリー大賞(東映が後援)が2014年に誕生した。ミステリーと銘打っているものの、広義のミステリーが対象である。狭義のミステリーに限らず、ストーリー展開が巧みで、映像化しやすい作品を募り、過去にはSF小説も大賞を受賞している。

新潮ミステリー大賞の募集対象は「ストーリー性豊かな、広義のミステリー小説。プロ・アマ問わずで、自作、未発表の作品」となっており、ノンジャンルに入れた。

文学賞、新人賞を獲得した小説は出版社から上梓され、読者に届けられるが、テレビドラマや映画、コミックの原作になるなど、素材として大きな役割を果たしてきた。

1000作品、2000作品の応募がある文学賞もあり、狭き門を突破して、厳選された小説が世に送り出されていく。(敬称略)


アマゾンのキンドル出版で、2023年8月、ペーパーバックと電子書籍の小説が発売されました。「権力は腐敗する」「権力の横暴や不正を許さない」をテーマにしており、お時間のある方はお読みください。
『黒い糸とマンティスの斧』 前原進之介著

この連載記事は、以下のような流れになっています。
1 小説を書きたいと思い立った「いきさつ」
2 どうしたら小説が書けるようになるの?
3 小説講座を探そう 
4 どの文学賞を受賞すると作家になれるの?


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