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書評-陰謀論
本屋で見つけた陰謀論に関する社会調査を行った本。
陰謀論を過去の研究などを踏まえながら「重要な出来事の裏では、一般人には見えない力がうごめいている」 (p6) と明確に定義しているあたりから始まるのが、ちゃんとした学術書だなという印象を与えている。
特に、アンケートとその統計的な調査を比較的厳密に書いているので、実際に使っているサンプルという意味で統計調査の勉強にもなった。統計分析とか因子分析に関する解説は実例がないと実感が湧きにくいのでこういうのはとても役に立つ。
概念
その後も、色々と面白い概念が出されていて面白かった。
「動機付けられた推論」は、ある情報を得て推論をするときに、あらかじめ信念がある人はそれに沿ったように推論するということで、たとえば右派の人はその信念に合ったようにニュースを解釈するし、左派も同様。
つまり、政治に詳しいほど陰謀論にハマりやすいということを表している。
「第三者効果」は、自分でない人について想像して考えることで、ここではソーシャルネットワークが陰謀論の巣窟だと考える人を対象に調査がされている。「自分は違うけど、他の人は陰謀論に騙されているに違いない」という考え方がうかび出てきている。
アンケート手法
アンケートの手法も、ちゃんと解説されていて結構面白い。陰謀論って信じてますか?みたいな、普通yes と答えにくいような質問について、どのように回答させることで真実を導き出すか、という手法だった。
「リスト実験」:Yes/Noで答えられる普通の質問を混ぜて、「この中にYes だと思う質問は何個ありますか?」という聞き方をする。そして、陰謀論に関する質問がある群とない群に分けて、その差から回答数を探しだす。
本にない例を作ると、以下のような3つを提示する群と、最初の2つしか提示しない群を作って、3がある時と無い時の差で「3」にYes と回答した人を見つける
1.税金は少ないほうがよい
2.年金制度は今後も継続できるだろう
3.ワクチンの中にはマイクロチップが入っている
「ヴィネット実験」:ある文章中の単語を色々入れ替えながら回答させることで、「その単語が入ったときにその文を同ぐらい信じるようになるか?」がわかる。
本にない例を作ると、たとえば以下のように内容をランダムにして世界恐慌に関する文章を出し、それをどれぐらい信じるか?と回答させる。
世界恐慌が起こる原因は、[属性1]だと[属性2]が発言している。
[属性1] 金融システムの失敗 or フリーメイソンの陰謀
[属性2] 日本国首相 or 米国の金融専門家 or 米国大統領
この違いから、陰謀論的な表現をどれぐらい信じるかがわかってくる。