土橋温泉とエディオンピースウイング広島と音戸温泉のこと(その1)
生きている間に、できるだけ多くのスタジアム(サッカー)に行く。それが私のカルマである。
北は花咲スポーツ公園陸上競技場(旭川)、南は、えがお健康スタジアム(熊本)まで、それなりに足を運んでいるのだが、何故か縁のなかった場所(のひとつ)が広島だ。
スタジアムどころか、広島県に足を踏み入れたことすらない。
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いつかタイミングが合えばと思っていたところ、エディオンピースウイング広島という新しいスタジアムが完成した。
界隈では
「とんでもないスタジアムが出来た!」
と話題である。
やるなら今しかねぇ。
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2024年6月14日。人生初の広島。
ホテルにチェックインしたのが20時過ぎだったので、とっとと酒を飲んで寝たいところだったが、銭湯に行かねばならない。これもカルマだ。
歩くこと20分。土橋温泉さんへ。
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看板を左に折れると、奥まったところにその湯が。
番台の女将さんが笑顔で出迎えてくれた。
脱衣場のテレビでは、当然といわんばかりにカープのナイター中継。
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北海道民にはやや特殊と感じられる造りの湯船で温まり、移動の疲れは消し飛んだ。
しかし、あの湯船の形状は何と説明しよう。逆表彰台とでもいおうか。あるいは、テトリスに出てくるアレの逆さバージョンとでもいおうか。
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湯から上がり脱衣場に戻ると、相変わらずカープの中継。0対0のまま、延長戦に突入しているようだった。
皆、食い入るように観ている。誰も服を着ない。あるいは脱がない。
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そうするのが礼儀に思えて、私もテレビを注視した。なお、野球のことはまるでわからない。
いま思えば、危険な行為だった。
「お兄さんは誰のファンじゃ?」
などと話しかけられたら、何も答えられず顰蹙を買っただろう。
私がカープについて知っているのは、達川だけだ。厳密には、当たっていないのに痛がってデッドボールの判定をもらう達川の珍プレーだけだ。
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女将さんの
「おやすみなさい」
を背に表へと出た。
道中、スーパーへ。
「旅先のメシは地元スーパーでこしらえろ」
という亡き母の言葉に従い、こちらへ。
スパーク。名前といい佇まいといい、絵に描いたようなローカルスーパー。素晴らしい。
なお、母親は存命である。
おやすみなさい。
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2024年6月15日。
メインイベントであるエディオンピースウイング広島は18時半キックオフなので、昼間は初めての広島を大満喫。
いつもなら珍スポットとかB級スポットとか呼ばれる場所を巡るのだが、何しろ初の広島である。今回は王道の観光名所を訪ねることとした。
初めてのサイゼリヤで、ミラノ風ドリア以外に選択肢がないのと同じである。
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まずは早朝から平和記念公園へ。原爆ドームを眺めたり、広島平和記念資料館の展示を見て回ったりした。
歴史とか政治とか科学とか難しいことはわからないが、人を殺しちゃいけないことだけは改めてわかった。爆弾こわい。
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資料館の企画展「ともだちの記憶」にあった、女子中学生の日記。日付は昭和20年8月5日。
なさけなかったとしても、今日は大へんよい日でしたと振り返られるような、そんな人間で俺もいよう。
バカ旅行に似つかわしくない決心をした。
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そして、ひっそり佇んでいたこちらも私の心を締めつけた。
平和記念公園一帯は、ワケのわからん爆弾が落とされるまで、住宅や商店が立ち並ぶ活気あるエリアだったそうだ。
爆弾ひとつで瓦礫の山となってしまった当地を埋め立て、整備して平和記念公園は出来た。
なので、掘り起こすと被爆遺構(と呼ぶらしい)が露出するという。
その遺構をそのまま展示しているのが、この被爆遺構展示館だ。
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整備された公園で人々が涙を流したり、手を合わせたりしていることは尊い。
そして、かつてはその場所で人々が味噌汁を啜ってメシをかっ込んだり、好きな子にわざと意地悪をしたり、手拭いをぶら下げて銭湯に行ったりしていたことも、同じくらい尊くて、惨い。
14万人が殺されたのではなく、1人×14万が殺されたのだ。
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柄にもなく真面目なことを考えながら平和記念公園を後にし、広島城へ向かった。
歴史に興味はないが、行く理由があった。
ミッション完了。
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城の敷地内に広島護国神社があるので、旅の安全と充実を願って参拝。
元気な赤ちゃん集まれ〜!
「見たい!」と思ったが、開催日は来年の5月5日。
というかエントリー期間が1年もあるのは長すぎるし、参加費が5,000円もするのは高すぎる。
生後半年から出場できるということは、胎児の時点でもエントリーが可能なのだろうか。生まれながらに泣き相撲力士。戦闘民族である。
…と思ったけど、生まれてからでないとエントリーできないらしい。
「代理のお子様ではご参加いただけません」とわざわざ書いてあるのは、そういう輩がいたからだろう。替え玉受験みたいなことか。泣き相撲界のなべやかん。
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まだ昼前。時間はある。次の行き先は宮島か呉か。
つづく