(読書感想文)『アーモンド』(ソン・ウォンピョン著)
「失感情症」(アレキサイミア)という性格特性を知っているだろうか。
この性格特性をもつ人は、自身の感情(怒り・痛みなど)を言語化することに困難を伴うため、症状を適切に伝えられず、病気からの治癒に影響があるという研究結果がでているようだ。
本書は、アーモンドの形をした脳内にある扁桃体が生まれつき小さいため、怒り・恐怖を感じ取れない少年が主人公である。
「失感情症」と表現されているが、「感情を失った」少年というのが正確そうである。
そんな少年は「怪物」といわれ育つ。
でも母と祖母の愛情をたっぷりと受けて。
しかし突然の出来事でそんな母とと祖母を失う。
それでも感情が湧かない。疑問しか湧かないのだ。
そんな少年はもう一人の「怪物」ゴニと出会う。
ゴニは少年と同い年、同じクラス。
ゴニは幼い頃に誘拐されて、愛情を知らないまま施設で育つ。
二人が出会い、互いに刺激しあうことで、成長する。
ざっくりだが、これが本書のあらすじだ。
Amazonなどの書評では「感動」の声をよく見かける。
しかしながら、本書の内容に私は少し疑問を抱いた。
感情がないだけで変人扱い。怪物?
感情があるにもかかわらず、相手を平気で傷つける人
(身体的暴力・言葉の暴力を含め)。
感情があるにも関わらず、傷つけられている人を傍観している人。
こちらの方がよっぽど怪物なのではないだろうか。
感情があることによって喜び・感動を感じることができる。
でも一方、怒り・妬み・悲しみも感じ取ってしまう。
負の感情が自分を他人を傷つけることにもつながる。
つまり私たちは誰しもが怪物になりうる。
そんな警鐘とも読み取れた。
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