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人はなぜ『天気の子』のストーリーについて細部を気にせず楽しめているのか。巧みなリアリティ調整のわざをみる

 こんにちは、こんばんは、おはようございます!
 インターネット女子小学生の錐洲美雨奈です😆
 今日もまたあたしの好きな作品である天気の子についてお話しようと思いますので、ぜひ皆さんお楽しみくださいませ!

 改めて天気の子のストーリーについて冷静に考えてみると、帆高が警察署から逃げ出し線路を走っていたパートや、そして帆高が迎えに行ったことで何故陽菜さんが下の世界に帰れたのか?などと細かく考えると気になるような箇所がいくつもあったはずです。
  しかしながら同時に、それでいてあたしや皆さんの多くもそのような設定やストーリーの細部を気にせずに楽しめたはずです。
 なぜあたしたちは細部を気にせず楽しめたのでしょうか。ちょっと気になりませんか?
 気になりますよね!
 えへー、ではここから美雨奈ちゃんがその理由をお教えしちゃいます!


 まず着目するべきは、高井刑事の髪型がリーゼントであることです。
 警察官の髪型でリーゼントなんて普通ありえないですよね。
 この高井刑事のアニメらしい髪型はノリやビジュアルの都合で考えられたものではありません。監督の新海誠自身がキャラクターのデザインにあたって二度のリテイクを出して決めているものなのです。
 ではなぜ新海誠はそのような指定をしたのでしょうか。
 それは、ありえない髪型の警察官をわざと出すことで、登場人物にキャラクターさを醸し出させ、リアルな人物ぽさを減らしたかったからにほかなりません。
 普通はありえない髪型の警察官が作品の中に当然のように存在している。そのことによって、この作品は"お話"であってリアリティ寄りの作品ではないですよって宣言しているのです。

 次に、陽菜さんの名前にも着目していきましょう。
 ここで今一度考え直してみると、そもそも天野陽菜という名前はあまりに晴れ女っぽくないですか?
 実はこれ、こち亀の「日暮熟睡男」や、ドラえもんの「出木杉英才」そして「剛田武」と同じパターンの名付けなんです。
 名前からキャラクターの性格や性質をわかるようにしている手法なのです。ちなみに、この名付け手法を文学においては仏教用語を借用して名詮自性(みょうせんじしょう)といいます。名がそのものの性質を表すという意味です。
 この名詮自性という名前の付け方は、否応なしに作劇上の都合を視聴者に感じさせます。
 天気の子では、ヒロインである陽菜さんの名前付けにこの名詮自性を用いて、さきほど触れた高井刑事のリーゼントと同様に、登場人物のキャラクター感を視聴者に覚えさせ、"お話感"を出していたわけです。
 (もし晴れ女に陽菜さんが選ばれた理由に、この名前が関わっているのであれば話は名詮自性に意味があったわけですが、少なくとも視聴者に分かる形でそれが明示されることはありませんでした。陽菜さんのお母さんも天気の巫女であったことが示唆されてはいますが、血縁により相続するという説明はありませんでした。おそらく設定でもそうなっているのでしょう。これは次回に説明しますが、前作の『君の名は。』との比較でみても面白いポイントです)

 お話感の醸成させた要因として、顔の表情の味付けも見逃せません。
 天気の子では『君の名は。』の時よりもギャグテイストの顔が多く使われていた印象があります。
 "><"という顔を帆高がしているシーンすらありました。
 勿論、現代において><顔は漫符(漫画のお約束記号ですね、例えば怒っているときの💢マークがあげられるでしょう)として一定の市民権を持っていますが、シリアスな漫画において怒りの表現にこの💢マークを使うことはあまりないでしょう。
 緊張感やリアル感を損なうからです。
 それは漫画のみならずアニメでも同様です。シリアスな場面でギャク調の表情や、コミカルなBGMがかかることはまずありません。
 ギャグテイストの表情を多用することよって、製作陣はこれまた"お話"であるとアピールしていたわけなのですね。
 表情ではなく身体表現ではありますが、晴れ女として最初の仕事であるフリーマーケットを晴れさせることに成功した時の三人での歓喜のジャンプも非常にお話的に戯画化させたものだったと指摘できるでしょう。



 さて、ここまで述べた沢山の演出手法で、我々視聴者は作品に対して"お話感"を認知するようになって、作品の細部より"お話"としての面白さに着目するメンタリティに誘導されられていたのですね。
 "お話感"へのうまい誘導で、私達視聴者はストーリーの細かいところをこれは"お話"なのだ、と気にせずストーリーを楽しめたのです。天気の子、さすがです。侮りがたし……!
(ちなみにこの"お話感"の手法はアニメ・ラブライブでも使われてています。また機会はあったら語りますね!)

 二回目以降の視聴で「あ、これも、もしかして?!」なんて感じに、"お話感"を出してるポイントを見つけて「なるほどー!」となるのも面白いんじゃないかな、って思います!


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 以上、インターネット女子小学生の錐洲美雨奈でした!じゃあね!ばいばい!


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