マンキュー経済学 ミクロ編 3章まとめ
第3章 相互依存と交易(貿易)からの利益
はじめに
このnoteは、今や、世界各国に於ける何十の国々の何百もの大学のマクロ経済学の授業で用いられるようになった「マンキュー経済学」のミクロ編をまとめたものになります。
これよりも前の章はマガジンにあるので、ぜひ興味を持てた方はご覧になってください。
時間がない人向けまとめ
人は、国内のみならず世界中の多くの人々によって生産された財・サービスを消費している。相互依存と交易は、より多くて多様な財・サービスを全ての人々が享受できるようになるので望ましい事である。
ある1つの財を生産する能力を2人の間で比較する時には2つの方法がある。
より少ない投入量で生産する事のできる人は絶対優位であると言える。
より小さい機会費用で生産する事のできる人は比較優位であると言える。
交換(貿易)の利益は、絶対優位ではなく比較優位に基づいている。
交換(貿易)が人々の生活をより豊かにできるのは、それぞれが比較優位を持っている活動に特化できるからである。
比較優位の原理は、国のケースでも、人のケースでも同様に当てはまる。
経済学者が自由貿易を提唱する時には、比較優位の原理に基づいている。
相互依存と交易(貿易)からの利益
この章では、牛飼と農夫の例を中心に、絶対優位と比較優位について説明をしている。
ある世界で牛飼と農夫が存在し、そこでやりとりされる財が牛肉とジャガイモしかないと仮定する。
牛飼と農夫は1日8時間働き、牛肉とジャガイモを下表に書いてある時間で生産する事ができる。(例:農夫は牛肉を60分で1オンス作る。)
この時、農夫と牛飼はそれぞれ牛肉とジャガイモの生産について、トレードオフに直面している。
上の表をそれぞれの生産可能性フロンティアで示すと以下になる。
<メモ>
第2章で説明した生産可能性フロンティアは曲線であったが、この例での生産フロンティアでは直線になっている事に気づいただろうか。
これは2章での生産可能性フロンティアが生産量に依存していたのに対し、3章の例では時間をどちらの財の生産に当てるかなので、一定の比率で入れ替える事が出来る。これはどれだけ生産していても不変であるため、生産可能性フロンティアは直線となる。
この世界では牛飼と農夫の2人しかおらず、生産される財もこの2つしかない。この時、自分で生産したものだけで生活をしている。
ここで牛飼は農夫にある提案を持ちかける。
「ねえ、農夫さん、あなたに提案があるの。あなたは牛肉をつくることをきっぱりと止めて、ジャガイモだけを一日中生産するの。それでジャガイモ15オンスを私にくれれば、そのお返しに私は5オンスの牛肉をあなたにあげる。」
この話は、農夫にとって得なのか?それとも牛飼にとって得なのか?
それとも両者にとって得になるのか?
牛飼は農夫の説得に以下の表を利用して説明した。
農夫はジャガイモに特化して貿易をおこなう事で、農夫と牛飼の両者が得をする結果となっている。これは何故か。
結論から言うと、特化する事が出来た為である。生産だけに着目すると農夫には特化すべき得意な作業は何もないように見える。
この原理を解明していく第1段階として、次のような質問を考える。
「この例において、牛飼いと農夫のどちらかがジャガイモをより低い費用で生産する事ができるだろうか。」この問題には2つの解答が可能である。
絶対優位と比較優位について
絶対優位という言葉は、人や企業の生産性を比較するときに使われる。
牛飼のように、ある財を生産する時に、より少ない投入量(時間)しか必要としない生産者は、その財に関する絶対優位を持っているという。
(今回の例では、時間という投入要素しかないが、現実では時間以外にも様々な要素が存在する。)
生産費用を考えるには、もう1つの方法がある。
必要な投入量を比較する代わりに、機会費用を比較するのである。
第1章でみたように機会費用は、そのものを獲得するために放棄したものである。今回の例で機会費用を考えると、以下の表になる。
農夫は、ジャガイモ1オンスを作る時に、牛肉1/4オンスを放棄している。
それに比べて牛飼は牛肉1/2オンスを放棄する事になる。
このようにある財を生産するのに、他の財を少ししか放棄しない生産者は、その財の生産に関して比較優位を持つという。
(今回の例での牛飼のように)一方の人が両方の財に対して絶対優位を持つことは出来るが、一人で両方の財に対して比較優位を持つことは不可能である。なぜなら機会費用はその性質上、もう一方の財の逆数の関係にあるので一つの財の機会費用が相対的に高いひとは、必ずもう一つの財に関して相対的に低い機会費用をもつ。
比較優位と交易、そして交易の値段
交易が社会のすべての人々に利益をもたらしうるのは、交易によって各人が比較優位を持っている活動に特化できるからである。
比較優位の原理は特化と取引による利益の存在を明らかにするが、いくつかの疑問が残る。取引にかかわる価格はどのように決まるのか。
(この説明は本性の範疇を超えているので解説されていないが、一般的な原則が説明されている。)
取引をする両者が利益を得るためには、取引の価格は両者の機会費用の中間になければならない。
これは中間にない場合、両者が牛肉の買い手になったり、売り手になったりする為、交易が成立しなくなってしまう。
終わりに
第3章は、牛飼と農夫、牛肉とジャガイモを例に、交易が本当に人々を幸福にするのかについて、絶対優位と比較優位という観点を学びながら、原理の理解を行った。次の4章では、市場について考える事になるので、より多くの職種の人々に理解しやすい内容になるかもしれない。
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