兄貴の作った鉱石ラジヲ
「僕の昭和スケッチ」36枚目
<画/もりおゆう 原画/水彩 サイズF5>
あなたは「鉱石ラジオ」って知っていますか?
当時の表記だと「ラジヲ」となります。
ある日曜日、兄貴が何かよく判らないものを作っていました。
まだプラモデルもない時代で子ども達は当時現れ始めた模型屋でハンダゴテや針金、工作用の木片等を買っては自分達なりの「何か」を作って満足していた時代です。
恐らく鉱石ラジヲはその類いで、学校の教材だったか、或はその当時流行っていたからなのか、とにかく兄は私によく判らないものを作っていました。
聞くと「ラジヲ」だと言うのです。
「だけど、電気はどうするんや? 乾電池か?」と私。
「電源はいらんのや。なくてもこれは鳴るんやぞ!」と兄貴。
「ウソや、そんなことあるわけないやないか…」
「黙って見とれ」
そんなやり取りをしながら兄貴はハンダゴテを上手に使い、小さなブリキ缶に入れられていたペーストの焼ける匂いを漂わせながら工作し、それは出来上がりました。
それこそが、電源を特に使わず、空中の電波を受信したエネルギーだけでイヤホンが鳴る「鉱石ラジヲ」だったのです。ラジヲにはイヤホンが付いており、それを耳に当てると、雑音混じりの小さな音だったが確かに音楽が聞こえて来ました。
私は大いに驚き、兄貴を崇拝したものです。
noteからクラッカーが届きました。有り難うございます。
2020.10.19.