見出し画像

壮大な歴史と現代の謎が交差する『QED 東照宮の怨』高田崇史の挑戦

冒頭から深く引き込まれるこの物語は、三十六歌仙絵巻を巡る連続強盗殺人事件と、日光東照宮に秘められた謎を追いかける知的冒険です。

桑原崇が挑むのは、歴史の裏に潜む巨大な「深秘(じんぴ)」歴史的背景と共に、読者を壮大なパズルの世界へ誘うシリーズ第4弾です。


三十六歌仙絵巻から東照宮へ:事件の発端

「三十六歌仙」を描いた絵巻に絡む連続強盗殺人事件が物語の幕を開けます。事件の発端は、何世紀にも渡って大切にされてきた稀少な佐竹本の歌仙絵。

あまりに高価なため、かつて36枚に分割され、それぞれが個人の手に渡りました。そのうち何枚かが盗まれ、2人の持ち主が異様な形で殺害されるという不可解な事件が発生。この時点で既に、物語の空気は一変します。

「三十六歌仙」とは?
三十六歌仙とは、平安時代に選ばれた優れた歌人たち36名のことを指します。百人一首のように、当時の文化や社会の中で大きな影響を持っていた人物たちの一部です(歌仙とは、歌の名人や詩人に贈られる称号)。

『QED 東照宮の怨』では、その歴史的背景とともに、桑原崇が巻き込まれる現代の事件との繋がりが描かれます。

東照宮の謎:歴史と薀蓄(うんちく)が絡み合う

『QED 東照宮の怨』のメインテーマとなるのが、徳川家康を祀る日光東照宮。東照宮は、17世紀初頭に徳川家康の霊を安置するために建てられた日本の重要な歴史的建築物です。

この作品では、「陽明門」「山王権現」「三猿」「北斗七星」など、東照宮に隠された謎と、それがどのようにして三十六歌仙絵巻事件に繋がっていくのかが語られます。

歴史薀蓄に精通している著者の高田崇史氏は、東照宮の構造や象徴的意味を細かく解説しています。

例えば、「陽明門(ようめいもん)」は、日光東照宮の正門で、彫刻の美しさから「日暮門(ひぐらしもん)」とも呼ばれ、一日中見ていても飽きないとされています。このような深い知識が物語に豊かな背景を与えている。

「事件を追うというより、歴史の真実に触れたような感覚」と読者は口にします。実際、桑原崇と棚旗奈々が日光東照宮の各所を巡りながら、隠された暗号やシンボルを解き明かしていくシーンは、歴史とミステリーの融合を巧みに描いています。

歴史と現代の交差点:天海僧正の影

東照宮に纏わるもう一つの大きなテーマが、天海僧正の存在です。天海は、徳川家康の顧問であり、彼の死後、東照宮をはじめとする大規模な結界を作ったとされる伝説的な僧です。

この天海の策略と結界が、物語の核心に迫ります。

「天海僧正が仕掛けた『深秘』とは一体何なのか?」

この問いが、読者の好奇心を一層掻き立てます。物語では、江戸幕府の支配構造や天皇家との緊張関係、さらには龍脈(地理的な力の流れ)という要素が絡み合い、歴史的な謎が複雑に展開されます。

桑原崇がそれを解明していく過程は、読者を一緒に歴史の迷路へと導きます。

「龍脈」とは?
龍脈とは、風水や地理風水に基づき、地球上に存在するエネルギーの流れを指します。これが、家康の墓所である東照宮と深く関わっているのです。

東照宮の建築が龍脈を意識して配置され、家康の力を永遠に保つために設計されたという説もあります。これが物語の中で重要な鍵を握ります。

ミステリーの核:狂気と合理の狭間

『QED 東照宮の怨』は、歴史薀蓄にとどまらず、ミステリーとしての要素も強く打ち出しています。犯人の動機や事件の展開は、歴史の背後に隠れた狂気を浮き彫りに。

犯人の狂気じみた動機が物語のクライマックスにおいて明かされますが、その背景には、将軍家と天皇家の確執、天海僧正の陰謀など、物語全体に張り巡らされた歴史の影が関与していることが示唆されます。

「今回も、犯人の動機には驚かされました」とある読者が語るように、『QED 東照宮の怨』の犯人像は単純ではなく、狂気と合理が入り混じった複雑なキャラクターです。

事件の真相が明らかになるにつれ、読者は歴史の深みに引き込まれます。

過去と現在を結ぶ物語の力

高田崇史氏の作品は、単に歴史を語るだけではなく、過去と現在を結びつけ、そこに生まれる摩擦や陰謀を巧みに描いています。『QED 東照宮の怨』も例外ではなく、過去の謎が現代に再び浮上し、現代の事件と絡み合うことで物語が一層スリリングな展開を見せます。

「桑原崇と棚旗奈々のコンビが今回も光る」と語られるように、彼らのキャラクターは物語にユーモアと深みを与えています。

棚旗奈々の純粋さと、桑原崇の知的で冷静な態度が絶妙なバランスを保ちながら、歴史と事件の両方に向き合います。

読者へのメッセージ:歴史を楽しむこと

最後に、『QED 東照宮の怨』は歴史を楽しむことを教えてくれます。現代の我々が持つ歴史の見方を、深く掘り下げることができる。

歴史は過去の事象に過ぎないと考えがちですが、『QED 東照宮の怨』を通じて、高田崇史氏はその歴史が現代にどのような影響を与えているかを再確認させてくれます。

「この本を読んで、歴史が単なる過去のものではなく、現代にも繋がっていることを実感しました」といった感想が多く寄せられているように、読者が歴史の重要性に気づかされる作品です。

まとめ

『QED 東照宮の怨』は、三十六歌仙絵巻を巡る殺人事件を軸に、日光東照宮や天海僧正に秘められた謎を解き明かす知的冒険です。

歴史的薀蓄(うんちく)と現代のミステリーが巧みに絡み合い、読者を引き込むストーリー展開は、シリーズファンにとっても新たな驚きが詰まっています。

歴史に興味がある方、またはミステリー好きの方には、必読の一冊と言えるでしょう。

『QED 東照宮の怨』のミステリーに夢中になった皆さんへ

次は『QED 式の密室』をぜひ手に取ってください!

陰陽師の末裔が絡む密室殺人と、安倍晴明の式神にまつわる歴史的謎が、あなたを再びスリリングな世界へと引き込みます。

式神の正体に迫る驚愕の展開、そして現代の事件と歴史の交錯が、さらに深い謎解きの楽しさを提供してくれること間違いなし!

歴史好きも、ミステリーファンも必見の感想文は下記のリンクから

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集