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TalentXCTOが語る、ポストAI時代のHRTechプロダクトとテック組織の未来
タレント獲得プラットフォーム「Myシリーズ」の累計導入企業が1,000社を突破しているTalentX。当社の営業やCSの推進力とサポート体制はさることながら、プロダクトを提供する以上、テック組織は重要な礎です。
コンパウンドSaaSとして毎年新規のプロダクト開発を行うなか、今年7月にはAI・自動化で日本企業の採用変革を加速させる新組織「AI X Lab.」を設立。生成AIなどを活用し、サービスの体験価値を向上させる機能開発にも注力しています。たとえば採用MAツール「MyTalent」には、自社に対する興味度の高い候補者の自動レコメンド機能や、履歴書・職歴書の文字情報の自動抽出機能などをリリース。今後もMyシリーズ全体へのAI・自動化の実装を予定しています。
今回はTalentXのテック組織をリードするCTO・籔下(やぶした)さんに、プロダクト開発を強くする当社テック組織の特長や体制、プロダクトの魅力、生成AIを使った今後の構想などをインタビューしました。
当社の未来について視野が広がる記事となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
個人のWillを大切にした開発に強い組織作り
——まずは自己紹介をお願いします。
籔下:
新卒はNECでテレコム事業に携わりました。就活時はスマートフォンが売れ出した時期で、今後はスマホがあれば、通勤も買い物もなんでもできる時代が来ると直感的に思ったことが志望のきっかけです。ソフトウェア開発(IaaS基盤)の開発をキャリアのスタートに、個人的にも勉強をする中でWeb技術に興味を惹かれ出し、スクラムマスターの資格取得や、社内向けのWeb開発の立ち上げをやってきました。
2015年頃に、AlphaGo(アルファ碁)と囲碁のaiが世間を賑わせました。その時、AIが初めて囲碁の世界王者に勝ったんです。そこからディープラーニングのようなワードをよく聞くようになり、独学で触り始めました。将来のキャリアの選択肢としていずれ上手くつなげられたらいいなと思っていましたね。
——現在はTalentXのテックチームを管掌されていますが、当社のチームメンバーにはどんな方が多いのでしょうか。
籔下:
経験豊かなメンバーがそろっています。メガベンチャーもいれば、スタートアップで当社より小さい会社の CTOや受託系のCTO、大手自動車メーカーでエンジニア以外の職種出身など。完全なキャリアチェンジでいえば、美容師や警察官だったメンバーもいます。
共通点でいうと、新しくジョインしていただく方によく言われるんですがシンプルにいい人が多いですね。
テックチームで求めているのは、人柄ありきで技術も持っていて、その人が来てくれるのが待ち遠しいと感じられる人。感覚的ですが、とても大事にしています。また、顧客目線と技術、事業理解のバランスを持っている人は当社に向いていますし、人柄にも表れる部分だと感じます。
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籔下:
TalentXは、組織全体として「Willベースキャリア」を大事にしています。四半期に一度の目標設定のなかで、1年後にありたい自分を記載する制度です。この目標に到達するため今伸ばすべき能力が明白になりますし、それぞれが思い描くキャリアを全社として吸い上げることで、会社として個人のキャリアと組織図を考えることにもつながります。
実は、テック組織に関しては、僕がマネジメントし始めた直後に退職者を2名短い期間でだしてしまいました。原因は、退職された方自身がやりたいこととやるべきことのギャップに対するモヤモヤを誰にも相談できなかったということをご本人にフィードバックいただきました。それを機に1on1を始めました。
現在私との1on1では、全メンバーに現状の忙しさと仕事へのモチベーションをそれぞれ10段階で表現してもらっています。こうすることで、例えば前回モチベーションに8点をつけていた人が6点になっている時に、この差異はどこから生まれたものなのかという疑問が私に生まれ、会話の中で「実はこういうことがやりたくて…」といった個人の意思を掘り下げるなど、マネジメントに活かすことを目的としています。
同時に、会社としての期待や取り組んでほしいことのすり合わせも意識しています。メンバー自身と会社のWillをマッチングさせることを意識しているので、そういう部分でお互いWin-Winの関係が続いてるのかなと思いますね。
——マネジメント体制も直近変更されると伺っています。
籔下:
そうですね。マネジメントは機能軸・事業軸のマトリクス体制へとそろそろスケールしないといけないと思っています。これまではバックエンドやフロントエンドなどの職能ごとにマネジャーを立てていたのですが、普段同じチームにいないとチームへの貢献が評価しづらいであったり、勤怠管理周りなどでも今後人が増えると課題が出そうだなと。なので、同プロジェクト内の縦軸でちゃんとマネジメントをしながら、横軸の専門性でスキルを評価していく体制を強化していく予定です。
すでに行っている取り組みでいえば、1つのチームを可能な限り小さくしています。Amazonが提唱している「ツーピザチーム」というものがありますが、2枚のピザで足りるくらいのメンバー数にすることでコミュニケーションパスが減り、チームの生産性を担保し続けることを意識しています。
また、裁量権を持たせることも大事にしていることです。僕がこれをやった方がいいよと伝えるより、プロダクトごとの方針はある程度任せたい。とはいえ、それぞれがつながっているサービスなので、全体の横軸の生産性は意識した上で、ある程度のバランスを持ってコミュニケーションを取るよう心掛けています。
——テックメンバーからはプロダクトが面白いという話をよく耳にしますが、籔下さんが感じるTalentXならではのプロダクトの面白さはどの部分でしょうか。
籔下:
新しいプロダクトが毎年のように立ち上がっているところがひとつあると思います。そのうえ、そのプロダクトが独立せずに既存のプロダクトと連携してシナジーを生み出しています。単独で新しいプロダクトをリリースするには2人ぐらいでスピード感を持って開発・リリースまでできますが、既存機能と連携している場合は、新機能が既存のプロダクトに影響を与える場合もあり、多方面のコミュニケーション発生や技術観点の難しさがあります。
弊社のようなコンパウンドで展開しているプロダクトの場合、プロダクト間の仕様が絡み合うことによる複雑性に対してどのようにソフトウェアを設計するのか、いかに生産性高く作っていくかが肝になると考えています。自分の担当するプロダクトだけではなく、他のプロダクトを理解しておくことで設計や仕様検討に活かせることが出来る一方で、全てのプロダクトの仕様や設計を理解するのは認知負荷が高くなり、新規機能や設計に対する学習効率の低下や既存の設計や仕様の変更に対するキャッチアップの面で課題が発生すると考えています。
そのため、組織やアーキテクチャのデザインや、そこから生じるプロダクトチーム間のコミュニケーションパスの設計、開発プロセスなどを通していかにチームとして複雑性に立ち向かえるかが問われるので、課題解決が好きなエンジニアにとって組織でどう解決していくかという点に楽しみを持ってる人間は一定数いると思います。
また、会社全体としては部署横断のシャッフルランチや、CSとのVOC(Voice Of Customer)ミーティングの場を設けています。日頃どのような声をお客様からもらっているのかテックとフロントメンバーで共有し、機能改善なども随時進めています。テック側は現場の生の声を開発に活かすことができ、また営業やCSも自身のアイデアや顧客の声を開発に伝えられるというのは、大きなやりがいになりますよね。
きっかけは2年前のクリスマス。満を持してAIプロジェクト始動
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——年々新プロダクトを立ち上げる勢いのなか、7月にはAI X Lab.を設立し、生成AIにも注力し始めました。そこに至る経緯を教えていただけますか。
籔下:
実は、2年ほど前のクリスマス時期に僕から代表鈴木さんとの1on1でChatGPTに関する話題を共有したことがきっかけです。ChatGPTが公開されてすぐにエンジニア界隈では大きな話題となり、自分も触っていた中で、鈴木さんにも共有したいと直感的に思いました。
MTGはかなり盛り上がり、そこで出たアイデアから2日でデモ作成まで実行したものの、いろいろな課題感からプロダクトとしてはまだ使えず、テック内でのアイデア出しで留まっていました。いつか実装したいと思っていた矢先、当社が使っているAWSの担当者との会話の中でAI関連のサービスに関して特別なサポートをいただけることになり、本格的に検証が始まりました。
AI X Lab.に関しては発足の数か月前に鈴木さんから話が挙がりました。僕自身もとから生成AIに興味があり、リソースがあればやりたいと思っていたので、AI X Lab.はかなりスピーディに立ち上がりましたね。
——現在のチーム編成や役割について教えてください。
籔下:
AI X Lab. はセールスイネーブルメントとプロダクトの2チームで構成されています。
セールスイネーブルメントは生成AIを用いた全社の生産性の向上を目的とした推進を行い、プロダクトはアイデア出しと検証、ビジネス的な価値が出せるかという点を踏まえて出てきたアイデアをプロダクトのロードマップに組み込むまでを主な役割としています。現状の正式メンバーは僕1人ですが、SREのメンバー1名にもデータベースの基盤やインフラ構築、ネットワークセキュリティの設定を手伝ってもらいながら進めています。
ロードマップに組み込んだあとは大枠の仕様を決めてからプロダクトチームへ共有します。私の方で最低限のユースケースを想定した検証環境とサンプル的なコードをプロダクトチームに共有し、より深い仕様や設計はプロダクトチームが担当します。
生成AIを利用できるサービス自体はAIの深い仕組みを把握しなくてもそれなりに利用ができるので、一部プロンプトエンジニアリングなどは試行錯誤しないといけないポイントもありますが、その辺はトライアンドエラーをしながら進めてもらっています。
ポストAI時代を見据えたプロダクト構想を
——当社サービスでの活用において、籔下さんが感じている生成AIの課題を教えていただけますか。
籔下:
まず、AIというと全て自動化したいという想いが出てくると思うのですが、やはり全部は難しいです。例えば、自動でAIが企業のタレントプールにスカウトを打ちますと言っても利用者からすると怖いじゃないですか。そこに関してはフル自動化の難しさがある中、どこでタッチポイントを持たせるか考える必要があります。
また、ChatGPTが出てきて生成AIはチャットのインタフェースを軸に活用されている印象がありました。 ですが、自分もChatGPTを触る中で感じましたが、チャットって難しいなと。プロンプトエンジニアリングっていうワードがありますが、要は、生成AIへの聞き方は言語化能力がいるので、生成AIとやりとりするための技術を1枚かまさないといけないんです。その辺はまだまだ課題感があると思いますね。
あとは生成AI自身の課題というより、 AIが出てきたことで起きたいろんな変化に対応していく必要性を感じています。例えば大学のレポートやエンジニア採用のプログラミング試験など、仮に生成AIが代行していても、一定の技術者でなければ見抜くのが難しいケースもあるかと思います。テクノロジーの進化によってAIが使われる前提の仕組み作りが必要になってきますね。
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——今後、生成AIを活用したプロダクト構想を教えてください。
籔下:
まずは今後のプロダクトの顧客価値やUX向上につなげたいです。もちろん生成AIありきで考えるのではなく、顧客価値・体験向上に向けたアプローチの一つとして生成AIという選択肢があり、それを最大限活かせる形で活用できたらよいなと思います。
またLLM(大規模言語モデル)は、既存のモデルに対して自分たちが保持しているデータを学習させることで自分たちの目的に沿った形にカスタマイズすることができるので、ゆくゆくは僕らのプロダクトの目的にさらに寄せたモデルを作る取り組みを進め、より良い顧客体験を創り出していきたいです。
プロダクトの構想とは違うのですが、AIが実際の利用者に変わってWebサービスを使う時代が来るのかなと、少し前から考えたりしています。要は、AIが利用者であると想定したときにどのような体験を提供するのかということをAI向けのUXとして考える未来がくるかもしれないと妄想していますね。
目指すはコンパウンドSaaSならではの体制変革と、データドリブンの強化
——生成AI以外にも技術的にチャレンジしたいことを教えてください。
籔下:
今はコンパウンドという形で複数のプロダクトを見ているので、来期以降また新しいプロダクトが増えてくる時に、全体のアーキテクチャーとして理想形を追い求めた取り組みをしたいです。工数はかなりかかりますが、やはり色々作りを変える必要があると感じています。
例えば、プロダクト横断で共通的なモジュールを開発するチームを設けて、各プロダクト間での二重開発をなるべく抑えたり、想定外の事象が発生した際にプロダクト間の通信経路も含め容易にトレース可能にすることで、何が起きたかだけでなくなぜ起きたかを即座にわかる仕組みづくりなどを進めたいです。
同時に、全体的なセキュリティレベルの統一や、プロダクトごとに権限移譲している部分と全体で足並みを揃えないといけない部分のバランスも大事だと思っています。
また、これらへの投資のほかにデータドリブンをもっと強化したいですね。
当社サービスの特性上、個人情報の取り扱いについては安全と信頼を担保するのは大前提のうえで、採用決定の伸び率など全社員が必要なデータを必要な時に見られるように整えていきたいです。BIツールの導入や一部のデータに関してはCSメンバーがSQLを利用してデータを出せるような教育などにもトライしていますが、単にデータにアクセスできるだけではなく、一人ひとりがデータに強くなるための取り組みも大事だと思っています。
おわりに
個々人がポテンシャルを発揮するための組織作りのこだわりや、生成AIなどを活用した今後のプロダクト構想についてお聞きしました。
今後のHRTechへの可能性や当社プロダクトの未来を楽しみに感じられた方も多いのではないでしょうか。AIを意識したUXについて当たり前のように考える未来もそう遠くないかもしれません。
TalentXでは、エンジニアメンバーによるTech Blogを更新しています。ぜひ下記よりご覧ください!
今回の記事を読んでいただき、当社のプロダクトの未来に少しでも関心を持っていただけた方は、まずはカジュアル面談などを通してTalentXの人に触れ、当社でやりたいことが実現できるのか、理想とマッチするのかすり合わせていただけたらうれしいです。
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