『フォーエバー・ヤング』~人生を左右する勇気ある愛の告白、53年経っても、あなたが後悔しないために~
1.後悔先に立たず
この作品をジャンルで言えば、ラブ・ロマンス映画になります。
この作品の主人公は愛する人への勇気が足りなかったために、とても後悔します。
あの時、プロポーズしておけばよかった。
好きだと告白しておけばよかった。
あなたはそんな経験ありますか?
恋して好きで好きで堪らない人というのは、人生の中に何人も現れないと思います。
すごく貴重な存在です。
その人と話をしているだけでとても幸せ。
もしフラれちゃっても、別れてしまっても、その人を責めたりしないと思います。
”貴重な思い出をありがとう、いっしょに居た時間とても幸せでした”って言える人。
こういう人をかけがえのない人って言うんだろうと思います。
こちらがエネルギーを持って何かを伝えると、結果がどうであれ、相手はそのエネルギーを返してくれます。
そこに自分の後悔は決してないと思います。
それは自分自身のためです。
でないと、過去に囚われて前に進めません。
さあ、勇気を持って当たって砕けましょう!
2.愛する恋人ヘレン
それでは作品に入ります。
舞台は1939年、大戦前のアメリカです。
主人公のダニエルはアメリカ空軍のテスト・パイロットの仕事をしています。
彼には、幼馴染のとても大好きなヘレンという恋人がいます。
セピア色調の映像の中、ダニエルの家で、暖炉の前で二人で寝転んで一皿のピザを仲良く食べたりします。
椅子で居眠りをするダニエルにヘレンはそっとキスをします。
その部屋にはビリー・ホリデイの曲 "The Very Thought of You" が甘い音色で流れています。
ヘレンがその曲を歌うのを口で押さえてちゃんと歌えなくしちゃったりして。
ヘレンといる時のダニエルはまるで子供のように楽しそうです。
ダニエルにはハリーという軍科学者の親友のハリーがいます。
とあるピクニックで、アイスクリームを持った男の子がずっと、ダニエルの方を見ています。
ダニエルはどう声をかけたらいいのか戸惑っています。
ヘレンはそう言って、ダニエルを諭します。
ダニエルは子供が苦手なんですね。
どう話していいのかわからないんです。
後々、ダニエルは子供と親密に接することとなるんですが...。
そして、その場所でハリーは妻ブランチに子供が出来たことを発表をします。
この子がキーパーソンだったりします。
ダニエルとヘレンは”次は私達ね”という風に見つめ合います。
ヘレンは早くプロポーズしてねと言わんばかりに微笑みます。
3.雨の降る悲しみのカフェ
とある雨の降る午後、ダニエルは行きつけの喫茶店でヘレンと待ち合わせをします。
列車の姿をしたおしゃれな喫茶店です。
先に来たダニエルはプロポーズの予行演習をしています。
少し気さくな感じのパターンを試します。
そこにヘレンが急いでやってきます。
ヘレンは塩をこぼしてしまうのですが、その塩を自分の首筋にかけます。
二人の間にしばらく沈黙ができました。
どうしてもダニエルは勇気が出ません。
急いで食べるダニエルにヘレンは優しくナプキンを差し出します。
ヘレンもダニエルのプロポーズに気づいている様子で、勇気の出ないダニエルに微笑みかけます。
ダニエルはプロポーズを言う勇気を出せませんでした。
ヘレンはダニエルにキスをして、カフェを出ていきました。
ダニエルは残念そうな顔をして、カフェ内の公衆電話から、ヘレンにプロポーズできなかったことをハリーに電話します。
その時、顔なじみの店員の動きが慌ただしくなりました。
ダニエルに言います「早く行ったほうがいいですよ。ヘレンさんが大変だ...」
何と、急いで喫茶店から出ていったヘレンはカフェの前の道でトラックにはねられてしまいました。
4.抜け殻のように
ヘレンは頭を打ってしまい、意識が回復しません。
毎日ダニエルはヘレンのベッドのそばに居続けました。
そして、時が経ち、半年間ずっとヘレンは意識が回復しないままでした。
医者もサジを投げているようでした。
ダニエルは抜け殻状態になり、家に閉じこもりっきりになってしまいました。
親友のハリ―もダニエルの家に行き彼を慰めます。
そこで、ダニエルはハリーが研究している冷凍睡眠保存の実験のことを知ります。
そして、被験者がいないということを聞き、数日間考えた末、ダニエルは自ら志願します。
眠りに入る間、灯台の元でダニエルとヘランとの幼い頃の楽しい情景シーンがスローで流れます。
5.ようやく目覚めてると
実験は1年のはずでした。
しかし、何と53年が過ぎ、1992年になりました。
軍施設の近所に住む10歳のナットとフィリックスは親友で、いつもいっしょに遊んでいます。
こういう寂しい気分の中にもこの作品にはユーモアがたくさんあります。
ナットはフィリックスに「歯医者はいつ行くの?」と言います。
フィリックスはパイの中の甘い所だけを吸い続けています。
次のシーンではフィリックスは歯に詰め物をして、何もしゃべることが出来ません。
フィリックスの兄は空軍で働いていて、車で配達をしています。
奇妙な歌を叫びながら歌い続ける兄を二人は無言で聞いています。
彼の運転する車の後部座席に乗せてもらい、軍施設にやってきました。
じっと車の中で大人しくしていろと言われますが、二人は言いつけを無視して施設を探検します。
とある倉庫で、潜水艦に似たものを見つけた二人は、潜水艦ごっこをし始めます。
二人は勢いでバルブを開けてしまいます。
すると装置の扉が開き、中から冷凍人間が出てきました。
ナットは着ていたジャケットを掴まれますが、必死に二人は逃げました。
ナットは母のクレアにジャケットを無くした経緯を説明しますが信じてもらえません。
一方、冷凍睡眠から目覚めたダニエルは、思うようにならない体を引きずりながら、53年経ったまわりの環境に愕然とします。
軍の関係者に説明しますが、頭がおかしいと思われ、相手にされません。
6.子供たちの助けを借りて
ハリーを見つけるしか無いと考えたダニエルは協力者を探します。
つかんでいたジャケットの住所を手がかりに、ナットの家に行きます。
ナットとフィリックスはパニックで二人同時にしゃべってしまい、ダニエルは聞き取れません。
ここは面白いです
ゾンビだと思っていた彼らの誤解を解き、これまでの歴史やテクノロジーを教えてもらいます。
第二次世界大戦や留守番電話、紙パックのジュースの飲み方など。
ダニエルがパイロットだと聞いたナットは驚き、とても嬉しがります。
3人は53年間の出来事を図書館に調べに行きます。
7.ナットの片思い
そこにナットが恋をしている女の子が来ます。
ナットはフィリックスに勧められて声をかけます。
この場面がとてもユーモラスで面白くて、ナットが女の子の気を引こうとします。
女の子は不機嫌な顔をするんですが、「上等の壁紙だよ」とフォローになっていないフォローをします
続けて、ナットはしでかしてしまいます。
もはや、アリスに相手にされません。
ナットはダニエルに大丈夫だよと陽気に合図します。
全然大丈夫ではないんですが...。
怪我して擦りむいだ痛々しい傷口を見せたりして、とんちんかんなことをしてしまいます。
そのやり取りをダニエルはじっと見ているんですが、あまり興味を持っていない様子です。
8.一人せつなくて…
母子家庭で二人で生活している母クレアと子ナット。
ナットは父がいなくて、すごくさみしそうにしていました。
いろいろあって、ダニエルは母のクレアとも仲がよくなります。
ダニエルも次第にナット親子のプライベートを知ることとなります
ナットは操縦を教えてとダニエルは懇願されます
ナット:「明日、暇があったら飛行機の操縦を教えて」
気落ちしていたダニエルは、フライトジャケットも飛行機もないと断ります
ナットは残念そうな顔をします。
ダニエルはふと、思い出の喫茶店に立ち寄り、二人が座ったテーブルに腰掛けます。
そして、塩を手に取りヘレンのしぐさを真似て首に振りかけ、目をそっと閉じます。
クラシックなカフェが傷ついたダニエルを優しく包み込んでいます。
ナットはダニエルにどうしたら、彼女を自分に振り向かせることができるか相談します。
ダニエルにとってヘレンを失った後なので、恋愛のことは考えたくないんですね。
ダニエルはリビングでビリー・ホリデイの曲 "The Very Thought of You" のアルバムを見つけます。
ヘレンとのたくさんの思い出がつまったあの曲です。
アルバムを見ながら、ヘレンを思い出し、さみしさが込み上げてきました。
事情を知らないクレアはその曲をかけてしまいます。
辛さに耐えきれなくなったダニエルは部屋を出て、涙しました。
ハリーに装置から起こされなかったということは、ヘレンは死んだのだ
あの時、告白していればよかったとダニエルは後悔したに違いありません。
9.男の友情
自分の考えが間違っていたと気がついたダニエルは真夜中に突然ナットを起こします。
10.ナットの勇気
次の日の夜、ナットは彼女の家に行き、木に登って、窓からアリスを呼びます。
アリスは窓を開けました。
ナットは深く深呼吸して目を閉じました。
ナットは心をこめて歌いました。
ユア・マイ・サンシャインです。
ダニエルは比喩で歌えと言ったのをナットはそのまま歌ってしまいました。
すごくユーモラスで暖かなシーンです。
アリスの後ろから女の子の父親が出てきました。
アリスは恥ずかしそうに顔を隠します。
ナットはうなだれて家に帰ろうとしました。
後ろを振り向くと、彼女は優しく微笑んでくれました。
ナットは元気を取り戻しました。
11.これからどうすれば....
ある日、ダニエルはナットとクレアの元を去ろうとしていました。
ナットはダニエルにかっこいいフライトジャケットをプレゼントします。
ナットとフィリックスの隠れ家ツリーハウスで、簡単な飛行機のコックピットをつくり、二人で擬似運転しました。
ナットにとって、父親と甘えることができない一時をダニエルと過ごしました。
だんだんダニエルの体に異変が出てきます。
ダニエルは急速に老化し始めます。
ナットは助けを呼び、ダニエルは病院に運ばれます。
軍は冷凍睡眠装置とダニエルの存在に気づきはじめていました。
軍はダニエルを探し始めます。
一方、ハリーの家を探し出したダニエルたちは病院を抜け出し、向かいます。
ノックして出てきたのは、ハリーの娘でした。
ハリーの娘はなぜか、会ったことのないダニエルの事を知っていました。
ダニエルはハリーの遺品の中から一枚の写真を見つけます。
小さな女の子と写ったヘレンの写真でした。
ダニエルは黙ってその写真を見つめます。
また、ハリーの実験記録を記したノートが見つかりました。
その最後のページには、”老化停止不能”と書かれていました。
ナットはそっとダニエルに触れました。
ダニエルを冷凍した後に、ハリーは被験者の老化を止めることができないことを知ります。
ハリーは装置からダニエルを助け出そうとしますが、その時の火災でハリ―は死んだとダニエルは知らされます。
そのため、53年間もダニエルが助けられなかったのです。
ハリーの研究資料をクレアは受け取りました。
老化を止められないことを知って落ち込んでいたダニエルに希望の光が差しました。
12.翼を広げて、恋人の元へ
ダニエルはヘレンの元に向かうことを決意します。
ハリーの家にFBIの追っ手が来ました。
車では逃げれないと悟ったダニエルは飛行機でヘレンの所に行こうと空軍施設へ向かいます。
折しも、昔の飛行機の航空ショーをしていた場所に逃げ込み、飛行機に乗って離陸することに成功します。
後部座席から物音が聞こえてきました。
なんとナットが飛行機に乗り込んでいたのです。
ナットはダニエルに父親の姿を想像し、離れたくない気持ちとダニエルの体を気遣う気持ちから、ダニエルの乗る飛行機に乗りました。
ダニエルは呆れ返っていました。
やがて、ヘレンの家近くの灯台が見えてきました。
ダニエルは老化現象がひどく、操縦困難な状態でした。
ダニエルは操縦をナットの手を操縦桿に乗せ、操縦を託しました。
二人の乗る飛行機は何とか着陸できました。
13.再会、時を越えた告白の時
辺りは風がとても強く、老化してもうおじいさんの姿のダニエルのグレイの髪の毛がなびきます。
この美しい風景、あなたにも是非とも観てほしいです。
ダニエルはヘレンの家のドアを恐る恐るノックします。
しばらくの間待ちましたが誰も出てきません。
するとダニエルは風上からの匂いを感じ取ったのでしょうか。
振り返ると摘み終わった花を運んでいる姿のヘレンを見つけました。
辺りは夕日で昔のあの時と同じようにセピア色に変わります。
かもめが数羽、風に乗って浮遊しています。
ヘレンもこちらに気づきます。
すっかり老体になったダニエルは足を引きずるようにゆっくりとヘレンの元に近づきます。
ヘレンは涙ながらに微笑みながら、言葉を発します。
この間の時間、ヘレンはどんな思いだったでしょう。
彼女は幼い頃、ダニエルと誓った灯台のそばの古い家で老後を過ごしていました。
ダニエルとの約束通りに。
一度は結婚し、53年経った今も、ヘレンはダニエルを忘れられなかったのですね。
ナットはそばで涙ぐみながら、二人を見守っています。
ダニエルはヘレンに今度は何の迷いもなく告白します。
ずっとずっと後悔し続けた日々を思い出しながら。
二人は抱きしめあい、やがてナットが寄り添いハッピーエンディングとなりました。
実は原文ではダニエルは ”So are you going to marry me?” と言っています。
「それで、結婚してくれるかい!」
53年前のあの日のプロポーズの続きのように話しているんですね。
なんて時間をかけたジョークだったのでしょう!
14.あなたの心がすっとする作品です
ほんの行き違いで別れ別れになった二人。
もし、あの日、ダニエルが勇気を出して告白していれば...。
もし、ダニエルが冷凍睡眠装置に入らなければ...。
ダニエルにとってはヘレンとの再会は半年ぶりですが、ヘレンと私達、観客にとっては、53年の月日が流れています。
すごく貴重な貴重な53年間ですが、これから二人が過ごすであろう一瞬一瞬のほうがもっともっとかけがえのない濃密な時間となるでしょう。
この作品は53年という時間より愛情のほうが価値が高いと私達に投げかけています。
フォーエバー・ヤングとは、心のことです。
肉体は衰えますが、心は永遠に持ち続けることができるということを教えてくれます。
また、ほんの少しの勇気の大切さを教えてくれています。
そして、ダニエルとクレアとナットの人のつながりの優しさがにじみ出ています。
ビリー・ホリデイの歌声でエンドロールが終わりました。
アメリカ映画らしい、きれいなきれいなハッピーエンドですね。
この作品を観れば、この拙い文章以上にあなたの心は震えることでしょう。
ビリー・ホリデイ、いいです。
ナットのユア・マイ・サンシャイン、いいです。
あの温かい思い出のカフェ、一度観てください。
ラストシーンの灯台への着陸。
飛行機とかもめの美しい飛行の共演。
摘んだ花を持った美しいおばあちゃんのヘレン。
クレアを演じるジェイミー・カーチスのお茶目でしっかりとした演技。
すべてがうまい具合にブレンドされたラブストーリーです。
あなたの心に必ず残る作品となると思います。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
では、次の作品でお会いしましょう。
さよなら。
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