『夢中問答』第十二話:自他を救う
問い
自己自身の人格を完成しなければ他人を幸福にすることには無理があるのではないでしょうか、それにも拘ら先に衆生斎度とは不可能ではないでしょうか。
夢窓国師曰く
衆生のために身命を惜しまないと言うことは生死を忘れて我が身の名利をも捨てる覚悟が必要になるのである。
しからば我が身をば忘れて衆生を助けることに成るばかりでは無く自己の善根を知らず知らずに行った
ことに成る。
それは求めずして仏道を成就したことになるのである。
ただ自身のために解脱を求めていては、小乗心であるがためどれほど善根を積んだといっても成仏すること叶わずと言う。
菩提心を求める人には智増悲増という行為に違いがある。
先ず一切衆生を度し尽くして後に解脱を求めことを誓うことを悲増と言う。
また我が身がまず仏道を成じてその後に衆生を導くとするのを智増と言うのである。
智増心の人は二乗心に似ていても一切衆生を度せんが為に先ず自己が成仏を求めて菩薩心成就するのである。
智増心悲増心と言っても結果としては一切衆生を度することに違いはない。
参照
『夢中問答』夢窓国師 岩波文庫:絶版
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