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健康を分けた、海軍の麦飯、陸軍の米飯
江戸の町では、玄米中心であった食生活が、元禄時代になって精米技術が発達し、白米が食べられるようになりました。その結果、ビタミンB1不足による脚気が増え、「江戸病」と呼ばれるほど問題となりました。この歴史的背景は明治から昭和初期の軍隊にも影響を及ぼします。
陸軍は白米を日本人の誇りと位置づけ、主食に据えましたが、栄養バランスを欠いた結果、脚気が蔓延。特に日露戦争では、脚気による死者数が戦闘による死者数を上回るという悲惨な状況を招きました。
一方、海軍は栄養学を導入し、麦を混ぜた「麦飯」を採用しました。麦に含まれるビタミンB1の効果で脚気をほぼ撲滅し、兵士の健康を守りました。この「健康を分けた海軍の麦飯、陸軍の米飯」の対比は、科学的根拠を重視する姿勢が健康や命運を大きく左右することを示しており、現代の私たちの食生活にもつながる重要な示唆を与えています。