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卑弥呼・邪馬台国 九州説・畿内説 (畿内説の根拠について)

 目を通した解説が多いわけでもないが、今のところ邪馬台国近畿説の根拠としては、下記の2点に集約されると理解している。(少なくとも、寺沢薫「卑弥呼とヤマト王権」、吉村武彦「ヤマト王権」からはそう読めた。)
1.「混一疆理歴代国都之図」に代表される、当時の大陸の人びとの倭国の位置に関する認識 (不弥国の先は、「東」とするべきところ「南」と認識してた)
2.漢鏡出土数が当初九州~近畿に比較的均等に分布、2世紀半ば以降四国東部~近畿に集中するようになる。従って、卑弥呼・邪馬台国の時代は畿内が政治的中心であったと考えられる。

上記2点について、それぞれ自分なりの評価を纏めてみた。

1.方角の誤認識説について

 15世紀の朝鮮で作成された混一疆理歴代国都之図や、唐代に作成された海内華夷図(現存せず)を元に作られたという華夷図を根拠に、邪馬台国があった時代、魏では一般的に倭国は朝鮮半島の南方にあったとし、魏志倭人伝の不弥国から先の「南」の方角は「東」と読み替えるべきだという説がある。

邪馬台国への行程と地図

 「ヤマト王権」の著者吉村武彦氏は、同書で投馬国を吉備とし、10日の水行で難波津を経由し、「魏使はまちがいなく(奈良盆地の)邪馬台国を訪れていた」(P.12、3)とされている。
 しかし、20日+10日+1ヶ月もかけて移動し、方角を間違えて記録するとは思えない。又、「南」を「東」に読み替えるべき根拠は何だろう。あるとすれば、南にそのまま水行すると九州南方になってしまうという矛盾だが、「水行」日程に関する解釈については、魏志倭人伝の解釈についてに書いておいた。

 次に前述の地図だが、なぜ魏の時代の報告記事より後の時代の地図を重視するのだろう?しかも混一疆理歴代国都之図は15世紀の朝鮮の役人が机上で資料を集め編集したものではないだろうか?
 魏の使いは現地に足を運んだ一次情報を報告しているはずで、その報告内容はほぼ正確だっただろう。
 しかし、そのような一次資料を編集する魏志倭人伝の編集者陳寿の責任は別にある。魏志倭人伝の解釈についてに書いたように、編纂内容に政治的意図が影響している可能性は十分あるだろう。それを知らずに記述を鵜呑みにして地図を作成すれば、混一疆理歴代国都之図のようになっても不思議はない。しかしそれは、魏の使者の認識とは違っていたはずだ。

 又、一般的に朝鮮半島の南方にあると認識されてた、というのは正しいとも思う。我々だってドイツがほとんど北海道より北と認識するより、西の方にある(西洋)と認識するようなものだ。当時、大陸の人びとが倭人の住む地域ついてどう認識していたか、別ノートに纏めてみた。
 それにしても、後漢書の「倭は韓東南大海の中に在り」や、晋書の「倭人は帯方の東南、大海の中に在り」、宋書の「倭国は高麗の東南、大海の中にあり」という記事はスルーして、混一疆理歴代国都之図や現存しない海内華夷図だけを重視するのはいかがなものかと思う。

 結論的には、魏志倭人伝の解釈についてに書いたように、方角については素直に解釈すれば良いのではないだろうか?

 なお、「南」を「東」に読み替えるべきという仮説に従った場合に派生すると思われる論説の違和感・矛盾は別ノートに纏めた。
 また、自分は魏の使者は伊都国、不弥国止まりまでしか足を運んでないと推測しているが、それは「魏の使者は邪馬台国を訪れたかに纏めた。

2.漢鏡の出土中心の移動について

吉村武彦「ヤマト王権」より

 吉村武彦氏は著書「ヤマト王権」で、岡村秀典「三角縁神獣鏡の時代」の図を引用し、「当初、九州から近畿地方に比較的均等に分布していた銅鏡が、二世紀半ば以降、四国東部から近畿に集中(考古学からみた漢と倭)したことから、近畿が列島の政治的センターになったことを意味する」という見解を支持している。

 自分は、モノの流通・情報(文化など)の伝播については、政治的な支配関係とは分けて考えるべきだと思っている。
 日本のアニメが世界中に拡散していることをもって、日本が世界を支配していることになるのか? 身の回りの日常品がどの国から来ているか的確に答えられる人は少ないだろう。日本はそれらの国々に支配されているのか?
 レトリック表現としてならともかく、実質的な政治支配とは異なるはずだ。必要条件ではあっても、十分条件にはなり得ない。

 ただ、ヤマト王権の権力拡大と銅鏡の普及が前方後円墳の伝播とほぼ同期しているのは事実だろうとも思っている。
 銅鏡(祭祀)の伝播については長くなりそうなので別のノートに纏めようと思う。ただ、今のところおおまかには、下のような流れを想像している。

銅鏡文化(祭祀)の伝播

魏志倭人伝の解釈について

九州説について


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