
2分で読める子育てエッセイ№572『トゲ抜き』
今朝、何かの拍子に右手に小さなトゲが刺さった。
ちなみにワタクシの住む地域では「すいばり」というのだけれども、ここでは「トゲ」と書いた。
トゲと書きながらちょっぴり違和感がある。
トゲの刺さった右手みたいに。
やってしまった、
と思いながら左手で抜こうとしてみたけどうまく抜けない。
小さすぎる、爪がうまくかみ合わない、今急いでいることがあるから落ち着かない・・・
と言い訳しながら、本当は焦点が合いにくいのよね~と白状しにくい。
登校前の「お母さーん! これどうしたらいい?」
を片付けているうちに、寝る前まですっかり忘れてしまっていた。
そうそう、確かこの辺に・・・
ようやく見つけた今朝の小さなトゲ。ややこしくなる前に抜いておこう。
ワタクシ、この刺抜きが子供の頃からメッチャ下手。
とくに表に出ていないトゲは超難関。
ライターの火で焼いて消毒した針で取るという方法が一般的だった実家のトゲ抜き。痛いだけでなかなか取れない。
子供ごころに「タコ焼きだって爪楊枝でうまく取れないのに、トゲがうまく抜けるものか!」
と思っていたので余計にうまくいくわけがない。
今回はエッジの効いた毛抜きで何とかなりそう。
魔法のメガネをかけて明るい場所に座ったその時、小5の娘がワタクシに声をかけた。
「あれ? お母さん、トゲ刺さったの? 抜いてあげようか?」
え? 怖くないの? トゲ抜き。
アワワワならないの? トゲ抜き。
人のトゲってそんなに簡単に抜けるものなの?
するとそのやり取りを聞いたうちのダンナ。
「そうそう、お姉ちゃんメッチャ上手だから抜いてもらったら?」
どうやらお得意さんらしい。
ならばと恐る恐る娘に毛抜きを渡すと、1㎜のためらいもなくつまんだ。
「ギャー!」
そこはトゲのない皮膚!
メッチャ痛い。
「ごめんごめーん。この毛抜きの感覚がよくわからなくて~」
けれど娘は全くひるむ様子もなくすぐさま次の攻撃へ。
「はい、抜けたよ~」
あっさりトゲを抜いてしまった。
え? もう終わり?
「爪でもつまめるくらいだったよ。また刺さったらいつでも言ってね~」
よく見える眼、そしてこちらが痛がっても怖がることもなく治療できる娘の度胸。ただただ感心しているとき、ハタと思いだした遠い昔の母の言葉。
「他人のトゲ抜き、自分は痛くないから全然平気~」
あまりにも強烈すぎて、いまだにワタクシに刺さっている。

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