ADHD児の感覚過敏は、感覚による問題か?注意機能か?
今回参考にした論文はこちら↓
雑誌名:Journal of Neurophysiology
Impact Factor:2.974(2023-2024)
※内容には個人の見解や解釈も含まれます。ご理解の上ご覧ください。
注意欠陥多動障害の感覚過敏さについて
注意欠陥多動障害(Attention-Deficit Hyperactivity DisorderI:以下, ADHD)は、不注意や衝動的な行動、活動性の亢進などを特徴とした特性を持つが、感覚についての問題もよく観察される。
これまでの研究で、感覚処理速度と多動性との関連を示した論文や、過敏さに対する防御機構の増加等が示されているが、これまでのところADHD児における特異的な触覚異常については広範な研究等も行われていない。
本研究結果から、ADHDと定型発達児を比べたところ、定型発達児よりも反応時間の課題等で成績が悪くなっていた。
ただ、触覚に関する課題と関連性がありそうだったかというと、そうでもなさそうと。
そのことから、ADHD児は脳全般的な興奮性(注意機能等)やIQなどにより、触覚の過敏さに影響を与えている可能性が考えられた。
つまり、感覚特性上での過敏さがあるわけではなく、脳全体の興奮性や抑制系が影響しているかもしれないことが示唆される結果となった。
療育現場の活動で、感覚遊び等をADHD児が嫌がる場合や参加が難しい場合、それは不注意やその他の刺激情報等が関連して、遊びが上手くいかないのかもしれない。
ということは、感覚遊び自体を工夫する(感覚刺激を変える)ことよりも、感覚情報をどのように適切に整理してあげるか、環境を整えてあげるかといった内容を変更する方がADHDの気質がある、特性や傾向がある幼児にとっては重要な支援の1つかもしれない。
まとめ
本研究の結果で、ADHD児は定型発達児と比べて反応時間の遅延等は観察されたが、感覚の過敏さが直接的に関与しているわけではなさそう。
ADHD児における感覚の過敏さには、不注意やIQなど、そのほかの要素も関連して感覚刺激の閾値や反応の程度に変化を与えているかもしれない。
ADHD児に対する療育現場の活動では、感覚の種類を変えることよりも環境を整えてあげるなど、環境面(不注意等)に対する配慮を行いながら、感覚刺激を楽しめる環境にすると、活動参加を促せたり、感覚遊びを楽しめるかもしれない。