日経平均株価の"大暴落"から経済を読む
こんにちは。株式会社myコンサルティング 代表の坂元康宏です。
8月5日にブラックマンデーを超える日経平均株価の大暴落がありました。
それから2カ月ほどすぎて株価はどうなったでしょうか。
心配された以上の大きな株価の下げというのはなくて、それまで続いていた「円安バブル」がいったん終わる形になりました。
7月31日に行われた日銀の政策決定会合にて、政策金利を「0~0.1%程度」から「0.25%程度」と実に16年ぶりの水準まで引き上げることを決定したことで、ドル円の為替レートも逆回転をはじめて、それまで1ドル160円ぐらいだったものが一時は1ドル140円を割り込みました。
株価もいったんは落ち着いて、じわじわと戻してきました。
ですので、今回の大暴落はバブルがはじけたというよりは、一時的な調整だったというのが正しいと思います。
9月になると日経平均株価は、さらに8月5日の大暴落以前に戻してきて、3万7000円台を回復しました。また為替も1ドル150円ぐらいの水準にもどしてきました。
そんな中、自民党の岸田総裁が辞任を表明し、9月27日に自民党の総裁選が行われました。
新しく自民党の総裁に選ばれた石破さんは、財政規律をきちんとしなければいけないという考えをもった人です。そのため「石破さんが総理になったら金融所得課税が強化されるのではないか」という見方が出てきたのです。
ちょうどこの9月27日は金曜日だったと思いますが、石破さんが自民党総裁になった当日に、夜間取引で日経平均が2,000円ほど下げました。休み明けの30日(月)には、さらに下げるという一幕がありました。
それまで8月5日の大暴落以降、金融緩和と財政支出の拡大を主張してきた高市早苗氏が自民党総裁選で優勢であると見られていたため株価も順調に上がっていましたが、石破さんが総裁になることで冷や水を浴びせられる格好になったのです。
ただ、石破さんが「金融所得課税強化をすぐにうちだすことはないだろう」という観測が広がり、株価の上昇トレンドはいまも続いています。
10月15日には日経平均株価がザラ場で4万円台を回復しました。もっともその翌日にはまた4万円を割り込むという荒い動きは続いています。
この日の売りのきっかけはオランダの半導体製造装置⼤⼿ASMLホールディングによる業績⾒通しの下⽅修正でした。終値は730円(2%)安の3万9,180円となりました。
このように荒い動きを見せながらも株価の上昇トレンドが続く理由は3つあります。
① アメリカの景気が思った以上によい
ひとつめの理由は、雇用統計などを見てもアメリカの景気が思った以上によいことがわかってきたことです。これによってアメリカの景気が後退するのではないかという懸念材料がなくなったことが株価を押し上げていると考えられます。
② 日米の金利差が高止まりする傾向にある
二つめは、アメリカのFRBが行う利下げのペースがそんなに早くないだろうと見られていることです。これによって日米の金利差がしばらく縮まらないのではないかと市場は反応しています。これが株高を招く要因になっているのです。
③ AIと半導体関連銘柄が強い
最後にAIと半導体関連銘柄の強さが続いていることです。いまの株価を牽引しているのはAIと半導体関連銘柄で、これらが相変わらず強く、市場に大きな影響力を持っています。10月16日に⽇経平均株価が⼤幅に反落した際も引き金となったのは半導体関連銘柄でした。
このように株価が上昇トレンドにありながら、上がったり下がったりとボラティリティの高まりを示している理由のひとつとして考えられるのは、中東情勢の不透明です。
具体的には、イスラエルとイランの間で全面戦争が起き、それが第3次世界大戦にまで拡大するのかどうか。そのたりが、いま日本で報道をみていると読めない部分が多いのです。これは投資家にとって大きなリスクといえます。
第3次世界大戦にまで発展しないとしてもイスラエルとイランの間に全面戦争が勃発すれば原油の価格が大きく上がるでしょう。中東情勢がどうなるかで、アメリカや日本の株価の動向にも影響が出てくると思います。
また、もう一つ懸念しているのは歴史上米国が利下げを始めた後まもなく、ブラックスワンなどで株価の暴落が起きているということです。
下記のチャートを見ていただくと、過去のITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックが起きる少し前に米国の利下げが行われていることがお分かりいただけるかと思います。
現状米国経済指標が強い関係で今年中の利下げはないと見られていますが、来年以降に持ち越しをされただけで来年には利下げが再びスタートすると思いますので来年以降は株価の暴落に十分警戒しなければなりません。
ところで「円高になると日本株が安くなる。逆に円安になると日本株が高くなる。」という方程式のような相関性があります。
8月5日の大暴落の際も為替は一時1ドル139円台までいきました。
それで株は大きく下がりました。
10月中旬のいまは日経平均株価も4万円近くで、いったりきたりしていて、為替も1ドル150円ぐらいまできています。
そんな中、石破新首相は大方の見方に反して早期解散に打って出ました。
そのため10月27日には衆議院選挙が行われます。
その結果が株価や為替にどんな影響を与えるのか。それに注目したいと思います。
株価のチャートの動きは、力強い上昇トレンドを見せているので、年内はこのまま株価の上昇が続くと考えていいと思います。
ただ先にも触れましたが、このところ続いていた「円安バブル」は解消する様相をみせています。つまりもう少し為替レートが円高に振れる傾向がチャートから読み取れるので、どこかで株価が頭打ちになる可能性もあります。
ドル円週足チャート:2021年から続く上昇チャネル(黒)を下抜けし、再度下限まで戻ってきているので、この後は円高方向に行きやすい形
株価や為替からは少し離れますが、最後に触れておきたいのは、金の値段があがっていることです。イスラエルとイランの戦争状態は、いまのところは株価や為替に大きな影響を与えていないようです。しかし、戦争リスクの高まりや経済不安など有事に備えて現物資産としての金の値段が上がっていることは、頭の片隅に置いておくといいでしょう。
金(ゴールド)2週足ログスケールチャート:2011年からのカップウィズハンドルの形(黄色)から2024年に上抜けし、ログスケールチャートのウェッジ(橙)の上限付近まできているので、ここが一旦ピークになる可能性もある形
逆に上抜けするようなことがあるとすれば、その時には既に米国が債務問題などで信用不安に陥っている可能性があります。
今回の記事は以上です。
株式会社myコンサルティング
坂元 康宏
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