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6曲目: Dean Martin and Ricky Nelson「My Rifle, My Pony And Me」とリスナー役としてのジョン・ウェインについて、など

曲名: My Rifle, My Pony And Me
アーティスト: Dean Martin and Ricky Nelson
作詞: Paul Francis Webster
作曲: Dimitri Tiomkin
初出盤の発売年: 1959年?
収録CD:『My Rifle, My Pony And Me - Movie And TV Soundtracks』(BEAR FAMILY 輸入盤)
曲のキー: C(ハ長調)

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筆者は映画から音楽へと興味が移った人間なので、1970年代にはかなり映画を見まくった方ではないかと思う。
(映画鑑賞史をまとめたら、1970年代は『パンダコパンダ』から最初の『スター・ウォーズ』あたりまでになりそうだ。)

当時はまだレンタルビデオなんてものはなかったけれども、そのぶん映画館が多く存在していたし、各テレビ局も今より頻繁に映画を放映していた。
セレクションも充実していたので、新旧、名画・B級、裸の有無など関係なしで、いろいろと見ることができた。

時は流れ、今ではレンタルビデオが衰退し、代わりにネットによる配信が主流だ。映画館については、大入り満員と閑古鳥の両極端になっているのかな? 調べたわけではないが、そんなイメージ。

ただ、どんな選択肢であれ、西部劇を見る機会は近年あんまりないんじゃないだろうか。
たとえば、主演がジョン・ウェインやクリント・イーストウッドやジュリアーノ・ジェンマのもの(後者2人の西部劇はイタリア映画なので「マカロニ・ウェスタン」と呼ばれていた)。
中でも筆者は『リオ・ブラボー』がお気に入りだった。だから、ディーン・マーティンやリッキー・ネルソンの方が、ビートルズやボブ・ディランより付き合いが古い。

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最近、『アメリカより遠く離れて』(瀬川昌久、蓮實重彦:著、河出書房新社)という本を読んだ。
この本は対談形式をとっており、映画や音楽をはじめあれこれと語り合うのだが、とにかくお二人ともものすごい記憶力で、とても94歳と82歳(当時)の対談とは思えない。
残念なことに瀬川昌久は昨年(2021年)末に亡くなってしまったが、6年後に健在だったら、百寿と米寿による続編ができそうな勢いの会話が繰り広げられている。

本の76ページで蓮實が瀬川に見せたいシーンがあるといって、映画『リオ・グランデの砦』の1シーンを二人で鑑賞する。
(おそらく対談の場にDVDか何かを持参したのだろう。)

あらすじや背景説明は割愛するが、サンズ・オブ・パイオニアーズが現れて歌うのをジョン・ウェイン(とその奥さん役の女優)が聞いているシーンを取り上げて、その時のジョン・ウェインがとてもいいのだと蓮實が説明する。

サンズ・オブ・パイオニアーズのジョン•フォード西部劇への出演が、どうやら縁故採用だったというのは初めて知った。
まあ、それはともかく、ジョン・ウェインが音楽を聞くシーンということで筆者が思い出したのが、『リオ・ブラボー』である。

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これまたいきさつは端折るが(なにせ記憶力が...)、刑務所に主人公グループ4名が立てこもり、悪党連中の襲撃に備える中、ディーン・マーティン演じる保安官が長椅子だか簡易ベッドだかに寝そべって歌い出すのが、「My Rifle, My Pony And Me」である。(日本でレコード化されたかは不明だが、「ライフルと愛馬」という邦題があるので、劇場公開当時に何かしらの日本盤が発売されたのかもしれない。)

ジャズやミュージカルの歌で言うヴァース部分(前口上みたいなもん)が終わり、リフレインの部分からリッキー・ネルソンがギターとセカンド・ヴォーカルを、ウォルター・ブレナンがハーモニカをプレイし始める。その様子をマグカップを持ったジョン・ウェインが眺めている、そんな構図。

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この歌のCDがほしいな、とずっと思っていたところ、1993年にベア・ファミリーというドイツのレーベルから西部劇のテーマ曲などを収録したCDが出た。
出だしにジョン・ウェインによるこんなナレーションが入っている。

「ハロー、ジョン・ウェインだ。『リオ・ブラボー』の共演者2人、ディーン・マーティンとリッキー・ネルソンがなかなかイカした曲を歌ってる。みんなが聞いてみたいと思ってくれることを願ってるよ」

ディーン・マーティンのアカペラ・ヴァースはカットされ、エンディングも早めにフェード・アウトする(曲が終わりきる前にウォルター・ブレナンのセリフがかぶさってくるからだと思う)し、音質も決してよろしくないが、そこが逆に映画のサウンドトラックからリアルに抜粋しましたという感じでよい。
ただし、CDのブックレットにはPromo Singleと書かれているので、正規発売されたものではないようだ。

そして、2000年にリック・ネルソン(ある時期から「リック」名義になった)の4枚組ボックスセット『Legacy』が出たのだが、ディスク1の最後にボーナス・トラック扱いでこの曲が入っていた(これも当然未発売だった)。
こちらはヴァースからスタートするし、音質もスタジオ録音らしく優良なのだが、残念なことにハーモニカが入っていない。

両ヴァージョンの歌いまわしが似ているので詳細を聞き比べた結果、この2つの元は同一テイクと断定したい。
事前に録音されたもの(つまり後者のヴァージョン)を撮影現場で流して口パク&手パクしたうえ、ウォルター・ブレナンのハーモニカだけオーヴァーダビングした(これが前者)のかもしれない。
ハーモニカはスタジオ・ミュージシャンの可能性もあるが、映画ではハーモニカを口から離すところまでピッタリ合っているので、本人の演奏をその場で録音した可能性もある。

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映画『リオ・ブラボー』では、「My Rifle, My Pony And Me」の後にもう1曲、「Cindy」が3人で演奏されている。

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