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「規格外野菜の販売」は本質的な解決方法なのか。

こんにちは、北海道の未利用食材から、「食べられるお皿」OKARADASARADA(オカラダサラダ)を開発中の大学生:マユです。
商品開発記をNoteに書きとめています。

開発にあたり道内あちこちの食品産業の現場に足を運んでいるのですが、
さいきん、野菜の価格高騰もあって注目を集めている「規格外野菜の販売」が、ほんとうに解決策として有効なのか疑問に感じています。

ともすれば「買って生産者を応援」というキャッチコピーが通用しなくなるお話。もしご興味があれば、さいごまでお付き合いください。


(きっと生産の現場を知らないと分からない話。
ただし、農業の専門家ではないのでご了承ください。)

規格をもうけるメリットと副作用

規格は、市場に商品を出荷するときに必要となる概念。
簡単に言えば、決められた大きさ・重さなど均質な農作物をそろえる基準。

出荷作業は、農家の方が箱詰めまでして農協へ持っていくこともあれば、選果センターに複数農家の農産物を集めて、一斉に箱詰めすることもある。
これは作物の特性、地域の産業の特性、金銭・労働力の制約などで、いろいろなパターンがあります。

〇規格を設けるメリットは以下の通り

  • 均質な農作物を消費者に届けることができる
    …単純に、細い🥕と立派な🥕は食べられる量も変わってくる。現状、
     価格/数での販売が多く、大きさが揃っていると消費者には便利。

  • 運送の効率化
    …箱も購入し、費用をかけ運ぶからにはデッドスペースをなくしたい。
     規格にあう野菜は隙間なく詰めるのが楽で、箱の大きさも規格にあって 
     いる。

△メリットを追うと発生しうる、副作用は以下の通り

  • 「綺麗な野菜」が消費者のアタリマエ
    …傷のついた🥕は店頭で売れ残る。→食品ロスになる

  • 規格を満たさない野菜が一定量できることが生産者のアタリマエ
    …同じ手間をかけても出荷できない、売れない野菜はいつもある
     その分のコストは収入につながらない。

    これを知っていると、現在は規格によって得られているメリットが常態化し、デメリットにばかり目が向けられているとも考えられます。

じっさいの出荷の様子。収穫と箱詰めをお手伝いして、いまから荷物番。


販売目的は何か

解決策の良しあしを語る前に、その目的を定義しておきましょうか。

上記の”副作用”に対するアプローチには、すでにいくつか種類があります。

  • 「綺麗な野菜」が消費者のアタリマエ
    ①店舗で売れ残ってしまったら、
     食品リサイクルに出して、飼料・肥料に生まれかわらせる
     循環型社会のコンセプトにも沿う。

    消費者の意識を変えようと、小売り企業が仕入れて
     「訳アリ野菜」や、「規格なし販売」を行う

カナダ(短期留学先)の野菜市場。特にトマトの売り方が形も色もばらばら。
  • 規格を満たさない野菜が一定量出来ることが農家のアタリマエ
    ③規格が設けられる販路ではなく、
     道の駅での「地元野菜」、農地の無人販売などで販売

    ④生産者から直送のECサイトを活用し、
     市場より少し安くても農家にとっては販売単価を上昇させる
     手間さえかければ「訳アリ野菜」として販売できる

    ⑤6次化として、農産物生産者がみずから加工設備を持って
     規格によって出荷できないものを加工品として販売

6次化ピザ、お手伝いさせていただいた道内農家さんが販売中。

ここでは、②と④が「規格外野菜の販売」です。
完璧な解決策などめったに生まれないので、
参考までに①~⑤のデメリットも挙げておきます。

①食品リサイクルは、最終的には資源を活用しているものの、
 リサイクルに至るまでに販売時の保管コストや輸送コストが余分。
 リサイクルする際にさらにエネルギーを必要とする場合もある。

②生産者にとっては、正規品に対して破格で買いたたかれる場合もある。
 「訳アリ」が多く出回ることで、正規品が値崩れを起こす可能性がある

③販売所が消費地から遠く、大きな消費が望めない場合がある
 ブランド野菜などは、イメージを守るには好ましくないこともある

④農産物を生産する以外の作業に、追加の手間がかかる
 ECサイトの運用がうまくいくかどうかに左右され、
 生産者の高齢化が課題となっている日本ではECに不慣れな生産者も
 (北海道は異様に農家の平均年齢が低いです。)

⑤6次化も同様、農産物生産以外の作業に追加の手間がかかる
 生産設備への投資や、農産物と異なる、加工品の販売戦略が必要

食品ロスについて時々講師をつとめるので、その時にもお話ししている内容です。


「規格外野菜の販売」は本質的な解決方法なのか

私の持論は、場合によっては本質的とは言えない、です。

先に述べた通り、運送の効率化を実現するために規格を設けると、
どうしても一定量の規格外野菜が発生してしまいます。
その割合は作物にもよりますが、植え付けた2~3割と言われています。

規格を設けたことによる副作用を改善しようとしたときに、
消費者の意識改革・生産者の収入向上が目的として掲げられますが、
既存の手段には、また別の副作用もつきまとっています。

たとえば。

消費者向けの規格外野菜のプロモーションは、
「形が崩れていても買おう」が多いのではないでしょうか。
これでは、規格を設けることそのものが悪者とされても仕方がない。
視覚的にわかりやすくても、背景までは伝わらないのです。

生産者直送のECサイトは、「買って生産者を応援」を体現してはいます。
手間のかかるサイト運営と、販売単価の上昇を支援しているのですから。
ただ、長期的に見たときには、
規格に沿っている商品の値崩れが起きてもおかしくありません。
訳アリ品は正規品よりも安いのが定石です。
ずるずると全体の価格が下がっては、元も子もないと思いませんか?


OKARADASARADAの開発のきっかけ

現ロゴ。OKARADASARADAをもじっています。

ひとの胃袋には上限があるので、
規格外野菜で販売量を増やしてもどこかで限界が来ることは確かです。

今開発しているOKARADASARADAは、
その代替案として生まれた、という経緯もあります。

そのままの販売だと値崩れを起こすのなら、加工してしまえば良い。
生産者が加工するには手間をかけられない部分を請け負い、
保存期間を延ばして、今までになかった野菜の消費方法をつくる。

ビジネスでSDGsやESGが重視されている中で、食品ロスだけでなく、
他の資源やエネルギー問題にも複合的に貢献できるもの。

そして何よりも、おいしくて体によいものを。

今年に入ってから、より多岐にわたるご支援をいただけるようになり、
提供先の輪が広がってきました。

毎年大量に使い捨てられている飲食用プラ皿・紙皿を、
少しでも多くOKARADASARADAで代替していきます。

決意を込めて、また別の農家さんに乗せてもらった小麦収穫コンバインからの夕日


参考文献

食品ロス、未利用食材について知るのに必須の情報ソース。
備忘録です。

〇食品ロス・食品リサイクルまとめ/農林水産省

〇未利用食材の総量算出用の統計/農林水産省(e-Stat)
・野菜と果樹…作況調査:収穫量と出荷量
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&month=0&metadata=1&data=1

・水産…漁業養殖業生産統計:生産量総量(聞き込みで補足)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E6%BC%81%E7%8D%B2%E9%A4%8A%E6%AE%96%E6%A5%AD&layout=dataset

・狩猟…野生鳥獣資源利用実態調査
   :捕獲頭数に占める食肉等に利用された頭数の推移
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=normal&toukei=00500248&tstat=000001112115&metadata=1&data=1


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