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#9 耳鼻科ジプシー、6軒目。

#4で書いたこだわりの耳鼻科以外は、近所のクリニックを巡ってきた。こだわりの耳鼻科以外の先生は、どこも短時間の診察で同じような診断をして同じようなアレルギー薬を出してくれた。
決して悪いわけではなかったのだけど、当時の私は嗅覚障害を治したくて、なにかプラスアルファのすごい治療を期待していた。

その中でここ3年ほどお世話になった5軒目の耳鼻科の先生は、まずじっくり話を聞いてくれた。そして丁寧に説明してくれた。検査も色々してくれた。
CTスキャンの写真を示して、ここに膿が詰まっていると説明してくれた。ファイバースコープで鼻茸の写真もみせてくれた。これを小さくするために、継続的に薬を飲んだ方がいいと、長期的に診てくれる姿勢だった。治療方針は学会の標準療法というのも当時の私には好感が持てた。きちんとエビデンスのある最新の知見を踏まえて診てもらえると思った。

だけど鍼の先生の話を聞いて、今まで見えていなかった側面が見えた気がした。

強いお薬に悪いイメージを持って避けたり、副作用を嫌って服用をやめようとする考え方があることは知っていた。
ただ、それまで私は自分なりに色々調べた上で、その薬を飲むことを選んでいた。
けれど、体質だとか全身への影響というのは気にしたことがなかった。

鼻が悪いと言っているのに、鍼の先生には生理やお通じについても尋ねられる。その全身を診るスタンスに触れて、強いお薬を飲むのをやめてみようと思った。
だけど出されたお薬を飲まずにまた受診すると、効いていないと思われてもっと薬を出されるので、病院を変えることにした。

次に行ったのは、近所に新しくできていたクリニック。先生はこれまでの経緯を聞いて、私のお薬手帳にあったアレルギー薬をそのまま処方してくれた。風邪のような急性疾患として扱わず、慢性疾患としてとらえてくれた。ハウスダストのアレルギーがあるので、花粉症の季節だけでなく、梅雨時や夏の終わりも薬を飲み続けた方がいいと言われた。耳鼻科に通うのは月に1回でよくなった。

一方で鍼に通うのは負担が大きかった。
経済的にも、毎週末家を空けることも。

鍼の治療院は先生が何人か在籍しているところで、コロナ禍をはさんで先生が2回変わった。私の体が鍼に慣れてしまったのか、先生との相性か、はっきりした効果は感じられなくなっていた。
費用も考えて、10回くらい通って体質が改善すれば鍼治療は完了するつもりで通い始めたが、20回通っても匂いは日によって感じたり感じなかったりで、薬を減らすこともできなかった。
鍼の先生にも、よくなってきたら間隔を伸ばしていけると言われていたが、いつまでも「また来週」だった。

自分の中で優先順位が変わったこともあり、鍼に通うのはやめてみた。
特に症状が悪化することはなかった。


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