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誤解されやすい日本語

「琴線に触れる」と書いたら「逆鱗に触れる」と誤解された、というXのpostを目にしました。このpostに対する返信として「難しい言葉を使うのは止めよう」と呼びかける人もいましたし、実は2007年に実施された『国語に関する世論調査』では、「琴線に触れる」の意味を「感動や共鳴を与えること」 と「怒りを買ってしまうこと」がほぼ同数だったという結果もあります。

ことばの中には当然、世の中の受け取られ方が変化したことで言葉の意味が変わったものも多くありますし、ここに載せた言葉もいつかは、ことばの意味が変わっていくかもしれません。ですが多種多様な表現力を持つ日本語の魅力を薄れさせないためにも、こういう「誤解されやすい日本語」について、改めて学んでおいたほうがいいと感じ、まとめる決心をしたのです。

不定期でことばを足していこうと思っていますので、また思い出した頃にアクセスして頂けると幸いです。

雨模様

雨が「降りそうな様子」のこと。雨が降り始めたあとには使いません。

一生懸命

「一生懸命」は、「一所懸命」からの派生で誕生したことば。意味は同じですが、使い分けができると美しいです。
「一所懸命」の「一所」は「一つの場所」という意味。命をかけて守る場所という言葉として誕生し、「ある一つの場所(もの)」に集中して頑張るという意味に。
一方で「一生懸命」は、「一生」という時間的な長さよりも、努力している度合いを表すことばとして使うそうです。

穿った見方

「穿(うが)つ」が持つ、「穴を開ける」「突き抜く」「掘る」という意味から「物事の本質を的確に言い表す」という意味のことば。「ひねくれた見方」のような、ネガティブな意味はない。

おもむろに

「不意に、突然に」という意味に使われることが多いですが、漢字表記は「徐に」となることからもわかるように、「落ち着いて、ゆっくりと行動する」こと。

確信犯

本来は「道徳的、宗教的または政治的概念に基づき、本人が悪いことではないと確信してなされる犯罪」のこと。ただし、辞書には「悪いことだとわかっていながらする犯罪」という派生の意味も併記されています。

奇特な

「優れており、他と違って感心なこと」という意味。類義語は「殊勝」。これを「変わり者」的な、ネガティブニュアンスで使う人も散見されます。

檄を飛ばす

「自分の主張や考えを広く人々に知らしめて、同意を求めること」であって、応援や激励というニュアンスはありません。

号泣

「激しく泣く」という意味に誤解されやすいことばですが、正しくは「大声を上げて泣く」という、発声を含む行為のこと。

姑息

本来は「その場しのぎの対応をすること」ですが、ネガティブな意味で使われているケースをよく見ます。

小春日和

秋の終わりである11月頃の、春のような穏やかで暖かい気候のこと。春には使われません。

(話の)さわり

人形浄瑠璃文楽の語り物音楽における、「聞きどころ(みどころ)とされている箇所」として誕生したことば。これから転じて「話や文章の要点」という意味のことばになりました。現在の使われ方は「冒頭」みたいなニュアンスが増えていますね。

潮時

「一番いいタイミング」のこと。ネガティブな意味はありません。

敷居が高い

「不義理や面目のないことがあって、その人の家に行きにくい」という、遠慮する感情を表すことば。ただし、広辞苑第7版(2018年発売)では「高級だったり格が高かったり思えて、その家・店に入りにくい」という解説が追加されました。

失笑

「的外れな発言に、失笑を買っていた」という感じで、意味としては「思わず笑いだす」「可笑しくて、我慢できずに噴き出す」です。ネガティブな意味はありません。

性癖

人間の心理・行動上に現出する癖や偏り、傾向、性格、性向といった行動傾向のこと。性行為に関することばは「性的」「性愛」「性欲」などであり「性癖」はここに含まれないが、誤用が増え続けている。

世間擦れ

実社会で苦労したため、純真さが薄れ、ずる賢く世渡りをする人へ変わったという意味。世間の常識と「ずれている」意味で使う人も増えている。

他力本願

辞書にも「誤った使い方が定着したもの」と記載されている「他力本願」。本来の意味は「自分の修行によって悟りを得るのではなく、阿弥陀仏によって救済されること」という、仏教用語です。

情けは人のためならず

「人に情けをかけておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」という意味で、「人のためではなく、自分のために情けをかけるべき」というニュアンス。しかし「情けをかけると、その人のためにならない」という、言葉通りの意味で使う人も多く見かけます。

なしくずし

「借金を少しずつ返す」という意味が転じて、広く「物事を少しずつ進めていくこと」という意味。 「着実に」や「一歩一歩」というニュアンスのことばですが、「うやむやにする」というネガティブワードとして使う人が増えている印象です。

煮詰まる

議論や意見が出尽くして、結論に至る状態になること。ネガティブな意味はありません。

爆笑

「大勢の人がいっせいに笑い始める」こと。現在では、一人が大笑いしたときの表現として使われることが増えてきた。

破天荒

「今まで誰もできなかったことを成し遂げること」。偉業を成し遂げた人、という褒め言葉。

ハッカー

「コンピューターやコンピューターネットワークに精通した人」という意味のことばでしたが、現在ではその知識を使い、コンピュータ上で不正を働く人というネガティブな意味で使われることが多いようです。コンピュータを知らない人にとっては恐怖なんでしょう。

憮然(ぶぜん)

意外な成り行きに驚いたり、自分の力が及ばなかったりした時に、呆然とすること。

役不足

自分に与えられた役目が重すぎること。逆の意味で使われることも多いですが、「力不足」=「(自分の)力が足りない」、「役不足=(与えられた)役目が足りない」と覚えると間違いを防げます。

乱入

複数の人数が一度に押し寄せること。プロレスの影響か、一人でも乱暴に侵入することを「乱入」と呼ぶ人が増えてきている。

悪びれる

恥ずかしがるとか、 自分のしたことを悪いと感じること。 「悪びれる様子もなく」などといった言い回しで使われます。


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