とある女子会のはなし。
きっとこの夜のことは、生涯忘れないだろうな、という女子会の話。
今年の夏、大学の頃のメンバーで集まり、北海道を旅行した。男子2名、女子6名。久しぶりに会った仲間たち。「変わってないね」なんてお互い言いつつも、社会に出て、それぞれの場所で生活して、 みんな大学生の頃よりずっと、大人になった。でも、「この旅行中くらいは」と学生の頃の気持ちに各々が戻り、移動中の車内で大合唱したり、富良野のラベンダー畑ではしゃいだり、札幌でなぜかみんなで銭湯に行ったり、スープカレー食べたりセコマで朝ごはん買ったりジンギスカン食べたりソフトクリーム食べたりなんか美味しいもの色々食べたりした。調子に乗ったせいか、私はお腹を壊した。
旅行中に泊まったのは、とあるゲストハウスだった。8人で割れば、かなり安く泊まれる。第一印象は「テラスハウスみたいだな」だった。広いリビングには、大きなテレビ。2つの寝室。我々が用意したのは素敵なお家と車2台だけ。台本は一切ございません。なんて。
ただ、我々の泊まるゲストハウスは、テラスハウスより過酷であった。いや、過酷な状況は女子たちによって産み出された。
とある女子「ベッドが3台×2部屋。じゃ、女子は3人・3人で分かれようか。」
私の知っているテラスハウスでは、男子部屋と女子部屋があり、各部屋で夜、各々の心の内を打ち明けたり打ち明けなかったりするものだ。ところがどっこい、このゲストハウスでは、あろうことか男子部屋が消滅してしまった。とある女子の一声と、その他女子の同意によって。
男子「大丈夫。俺ら、リビングで寝るから……夜トイレ行きたいときは、電気つけてもらって構わないから……」
心優しい男子たちの御好意により、女子たちは、1人1台、ふかふかなベッドを手に入れたのでした。めでたし、めでたし。
こうして無事(?)部屋決めが終わり、そこへ2泊した。私はその間にお腹を壊し、1つしかないトイレを朝から不本意ながら占領してしまったり、夜中に何度もリビングの電気をつけてトイレに行ったりと、散々仲間たちに迷惑をかけた。
そして肝心の女子会は、2泊目の夜に開かれた。私と同じ寝室になった、2人の友人と。仮に、A子とB美としよう。日中まで学生の頃のテンションで生きてきた私たちだが、旅行の最後の夜、現実を見始める。現実世界でのA子は、同い年の彼氏と来年結婚予定。B美は、年上の彼氏と結婚を前提とした同棲を始める予定。ちなみに私も、来年結婚予定である。遅かれ早かれ、来年以降、3人とも人妻となってしまうのだ。学生の頃は、恋バナに花を咲かせてきた私たち。卒業して3年。恋は実を結び、「結婚」が一気に身近になり、あの頃より大人になってしまったんだねと、大人になりきれない私は、少し寂しい気持ちになった。だから、つい提案した。
「ねぇ、恋バナしよーよ。」
「恋バナ?」と2人は笑った。大人になりきれない私は、二人に拒まれるだろうかと、どきどきした。
「いいよ、しよーよ。」
受け入れられた。そこから、私たちはまた、学生時代に戻った。「A子は、彼氏さんのどんなところが好きなの?」「私はね…○○なところ。」「B美は?」「私はね…○○なところ。むーは?」「私はね…○○なところかな。」告白のセリフは。彼氏はどんなところを好きだと言っていたか。初めて行ったデートは。何て呼び合っているのか。私たちは、リビングの男子たちに聞こえぬよう、ヒソヒソ話で恋バナした。それはまるで、修学旅行の夜のように楽しかった。
職場の先輩方や、高校の友人とする恋バナは、「これから」の話が多かったように思う。同棲はするのか。結婚はどうするのか。仕事はどうするのか。子どもは。マイホームは。お子ちゃまだった私には、そのような恋バナは、敷居が高かった。彼氏と話し合っていることだったとは言え、いざ他人の話を聞くとなると、「皆すごいなぁ。色々考えているんだなぁ。」と、自分の未熟さを思い知らされたかのようで、その場にいることが少し恥ずかしかった。だからこそ、この夜に開かれた「彼氏の好きなところ暴露大会」は、居心地がいいものであった。
時間にしたら1時間にも満たないプチ女子会であったが、私はこれが生涯忘れられない女子会になると思った。旅行が終われば、現実に帰る。来年には、結婚する。各々家庭をもち、こうしてみんなで集まれる機会はなくなる。仮にあったとしても、今と同じ気持ちで開かれる女子会は、この先1つとしてないのだ。
居心地の良かった「女子会」は、これで終わりだ。寂しいけれども、現実なんだと私は受け止めるしかなかった。だから「また開こうね」とは言わなかった。最後に、この女子会を「女子会」たらしめる一言で締めくくった。
「他の人には、内緒だよ。」
さよなら、女子だった私。大人になれ、私。
とある女子会のはなし。