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『海よりもまだ深く』みんな不満なんだけど希望も捨てないのが人生ー昔、映画が好きだった。そして今も好きなのだ 60s映画レビュー(13)

これ5年前の映画です。蒔田彩珠が子役で出てるというので見てみました。主人公の姉の長女役。ホンのちょっとだけですけど。  

でも映画そのものは面白い! 

嫌いな人もいるみたいですが、是枝監督ってある意味天才的な監督だと思います。

何気ない家庭の風景、何気ない家族の会話の作り込み方が半端なくリアルなんです。

この作品では主人公の売れない小説家(阿部寛)の母親(樹木希林)が団地に住んでいるんですが、彼女が料理するときに使う使い込まれたお鍋が何ともリアルなんです。これを見るだけで満足しちゃいます(ちなみに『海街diary』のカレー作りシーンで使われる鍋も素晴らしかったな)。

さて、ストーリーはいたって地味でして、売れない小説家である主人公とその母親、夫婦関係が破綻している奥さん(真木よう子)、小学生の長男、主人公の姉(小林聡美)という非常に狭い人間関係の中で進行します。

でも、その狭い人間関係で展開する会話がじつに面白い!「あるなあ、こういうの」という会話が次々と繰り出されて、そのリアルな日常を見ているだけで面白いんです。

ただし、うまく非日常も入れられていて主人公は食べていくために探偵稼業のバイトをしてます。しかも金に汚く何かとトラブルを起こします。

こうした非日常が当たり前のような日常の面白さを拡大してくれているんですね。

「人生どこからこうなっちゃったのかな?」

主人公は自分の人生に不満です。小説が売れたのは一度きり(一度売れたので諦め切れない)、大好きな奥さんには愛想をつかれる、わが子に父親らしいことをしたいが空回り…。

でも、じつは主人公に批判的なその奥さんも姉も母親もみんな人生に不満なんです。そこがさらりと描かれています。

しかし、誰もが小さな希望があるんです。それはホントに些細な希望なんですが。

この映画を見ていて思いました。

人生ってこれでいいんだな、って。天才バカボンの「これでいいのだ!」はけっこう名言なのかもしれないです。




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