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作者にとって最高傑作でも、読者にとってそうだとは限らない。だが…

小説の評価は、結局は読んだ人の「好み」に左右される――これが、長い間「読書を趣味」としてきて、様々な書評、ランキング、人々の生の反応を見てきた自分の結論です。

人生や人間の心の深淵を描いた文学史に残る名著でも、興味の無い人間にとっては「つまらない」ものでしかありません。

逆に、コアな読書家が「くだらない」と扱き下ろしたライトノベルが、多くの人々の手に取られ、売上ランキング上位にランクインすることもあるでしょう。

結局、その本が「おもしろい」か「つまらない」かを決めるのは、読んだ人の「好み」や「感性」なのです。

なので当然、作者が「これは面白い!」と思って書いても、読んだ人がそれを「おもしろい」と思ってくれるかどうかは分かりません。

たとえ作者にとって「最高傑作」と思えるものができたとしても、それを読者が評価してくれるとは限りません。

場合によっては「好みじゃなさそうだから」と、「食わず嫌い」ならぬ「読まず嫌い」で、読んですらもらえない場合もあるでしょう。

小説を公に発表するというのは「そういうこと」だと、自分は思っています。

しかし、だからと言って「最高傑作を目指す」ことに意味が無いとは思っていません。

なぜなら、本当の傑作は、読者のみならず、作者自身の価値観や人生さえ変える力を持っているからです。

ことわざに「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」というものがありますが…自分自身の生んだ作品であっても、時に思いがけない「気づき」をもたらしてくれることがあります。

それは執筆の最中かも知れませんし、忘れた頃に自分の作品を読み返してみた時かも知れません。

時に、思いがけない「ことば」が自分の中から溢れ出てくることがあるのです。

あるいは、過去に何の気なしに書いた「ことば」が、現在の自分の心に突き刺さることがあるのです。

それは自分の人生に影響を及ぼし、生き方を変えることすらあります。

そんな小説を書くことができたなら、「この小説を書き上げられただけでも、自分の人生には意味があったなぁ」と、自然と思えるようになります。

たとえその小説が、なかなか評価を得られなかったとしても、決してその小説を書いたことを「無駄だった」とは思わなくなります。

小説とは、文章とは、「他人に認められなければ価値がない」というものではありません。

たとえ他の誰からも読まれなかったとしても…他の誰でもなく「自分自身」にとって、価値あるものとなる可能性はあるのです。

他人に認められなかったからと言って、自分までがその価値を否定してしまうのは、哀しく、もったいないことです。

それに、「自分にとって価値あるもの」ということは、「自分と“同じ”、または“似た”人間には響くかも知れない」ということです。

小説の評価が「好み」に左右されるなら、自分と同じ好みの人間に、「自分にとっての最高傑作」を見出してもらえたなら、それはちゃんと評価されるということです。

(作者の欲目で作品を過大評価していないなら、の話ですが…。)

むしろ、そういう「同じ好みの人間」の目に留まった時のために、小説のクオリティーは上げておくべきです。

自分自身ですら「面白い」と思えない作品だったら、たとえ「好みが同じ人間」が読んでくれたとしても、面白いと思ってもらえるわけがないですから。

(ただ、逆に自分が「面白くない」と思った作品が、好みの違う人間に「面白い」と思われる可能性もあったりするわけですが…。)

また、クオリティーの高い作品は、時に「ジャンル」や「好み」の壁を超えて読者を引き寄せることがあります。

小説の面白さは、世界観や設定だけで決まるものではありません。

台詞回し、登場人物の魅力、ストーリー展開、物語に込められたテーマ等々…。

そうした「小説自体」の「おもしろさ」が、読者に「こんなジャンルもあったんだ」「こういうジャンルもおもしろいな」と“新たな扉”を開かせるのです。

そんな可能性を掴むためにも、小説のクオリティーを上げ、最高傑作を目指す意味はあると思います。

…ただ、どんなにクオリティーの高い作品を書けたとしても、読んでもらえないことには、その面白さに気づいてももらえないので、「クオリティーを上げる」こととは別に「読んでもらうための努力」も必要となってくるわけですが…。

(それと、「好み」「感性」の他にも、評価を左右するのではないかと思っている要素が1つあるのですが…そちらはもう少し思考がまとまってから記事にしたいと思います。)

【追記:記事にまとめ始めました】

上記「評価を左右するもの」について、「好み」の問題も含めて記事にまとめ始めました。1つの記事にまとめるのではなく、1項目につき1記事で分割して少しずつ記事にしていきます(当初は「他に1つ」の予定でしたが、考えてみたら他にも見つかってしまったので、少なくとも4項目以上になるかと…)↓。



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