見出し画像

個別最適な学び研究会

11月2日(土)に行われた「個別最適な学び研究会」。非公式の研究会ながら、申し込み500人越え、当日の参加者は385人とかなり大きな規模のイベントでした。私も授業を公開しましたが、全国で腕を磨くたくさんの先生方に参観していただき、学びの多い1日となりました。参観していただいた先生方への感謝の気持ちも込めて、授業について振り返りたいと思います。

体育の見方・考え方とは

協議会スライドより

 今回の研究会、授業の肝になるのが「見方・考え方」でした。学びの主体である子どもが見方・考え方を働かせながら個に応じた学びを展開する、そんな姿をイメージして授業をデザインしていきます。しかしながら、学習指導要領で示されている「運動やスポーツを、その価値や特性に着目して、楽しさや喜びとともに体力の 向上に果たす役割の視点から捉え、自己の適性等に応じた「する・みる・支える・ 知る」の多様な関わり方と関連付けること。」という文言からは、どうしても授業での子供の具体的な姿が想像できませんでした。そこで大変生意気ではありますが、あえて批判的に体育科の見方・考え方を問い直してみました。(所属する研究会の考え方を含んでいます)
 体育というよりもスポーツとの関わり方について言及されていないか?
体育科の究極の目標である生涯スポーツという点では重要な視点であるのは間違いありませんが、体育で学ぶことってそれだけではないのではと思ってしまいます。そこで改めて、
 体育での学習で子供が働かせている見方・考え方って何だろう?
 と考えてみると、体育は「運動を通した課題解決」が学習の中心であるから、その過程で働かせているものが体育科の見方・考え方なのではないか。ということは、
課題解決過程で働く認識方法や知識そのもの
運動の特性に応じた思考や取り組み方
が見方・考え方であると捉えることができます。あくまで仮定ですが、そのように捉え直すことで、子供の姿が想像できるようになってきます。

協議会スライドより

 その見方・考え方を今回実施する「跳び箱運動」に当てはめ、跳び箱運動の見方・考え方を働かせている子供の姿を「技のポイントを理解し、自分の感覚と実際の動きのズレを修正しながら、動きを発生・形成する姿」と提案させていただきました。

学習過程、単元構成

協議会スライドより

 子供が、取り組む技や場、練習方法を自分自身で選択し、見方・考え方を働かせながら課題解決に取り組むためには、個別学習が最適です。ただし、いきなり丸投げしても、当然難しい。ということで一斉指導(第1時〜第3時)で共通技に取り組みながら、技のポイントや練習方法を確認しました。台上前転→伸膝台上前転→首はねとびの流れで1時間ずつ、特に、技を発展させていくためには、動きの共通点と相違点を理解することが大切なので、そこに着目させました。
・台上前転→伸膝台上前転では、膝を伸ばす、順次接触、「つ」の字を作る。
・伸膝台上前転→首はねとびでは、順次接触の途中で「つ」の字ができたら、一気にはねる。
などです。技のポイントをただ説明するだけではなく、「ここまでは同じ」「ここが違う」という思考が特に大切です。

第4時からは個別学習。技のポイント、特に共通点と相違点に着目した技の発展のさせ方をとにかく意識させました。子供が取り組む技は、首はねとび、頭はねとび、前方倒立回転とび。今回は練習の効率などを考慮して、同質集団でのトリオ学習を選択しました。

ソフトバンク「A Iスマートコーチ」

自分の感覚と実際のずれを認識させるためには、ICTが一番ということで、ソフトバンクさんの「AIスマートコーチ」を活用しました。

たくさんの機能があり、全て使いこなせませんでしたが、動画比較は子供たちもたくさん使っていました。お手本の動きと自分の動き、自分の過去の動きと現在の動き、1つの画面でそれが比較できるのはとても良かったです。

AIスマートコーチを使って


授業での子どもの姿

 公開授業ですが土曜日の公開、なおかつ非公式ということで、10名ほど欠席でしたが、それでも22名の子どもたちが参加してくれました。感謝です。
 授業開始前から「もう自分たちで準備運動していいですか?」と頼もしい子どもたち。個別学習をしているところをたくさん見ていただきたいので、もちろんOK。
挨拶後、課題の確認。前時の子ども達の動きから、「着手からの突き放しの意識が弱い」ということが共通の課題になると思ったので、いつもよりも丁寧めに意識づけをして、いざ個別学習開始。
 各々の課題解決に向けて、3人で協力しながら学習を進めていました。個別学習の教師の役割は、子どもの試行錯誤の邪魔をしないことだと思うので、矯正的フィードバックよりはむしろ、上手くいっていなさそうなところに行っては「どう?」「何が上手くいかない?」と子ども達の課題を引き出して言語化させることに注力しました。課題解決がうまくいった子、うまくいかなかった子それぞれいますが、技のポイントを意識し、ICTを使いながら、協働的に学習している姿が見られました。
 お客さんがいてもいつも通り学習を進められる子供達にはいつも感心させられます。むしろソフトバンクさんの取材が入っているからか、いつもより多めにAIスマートコーチを使っていました。

協議会で感じた成果と課題

 協議会ではたくさんのご意見、ご感想をいただき、私自身とても勉強になりましたし、もっと勉強しなければという気持ちになりました。授業終了後も、たくさんの先生方から質問していただき、さらに授業での子どもたちの姿を教えていただきました。参加していただいた方ありがとうございました。

【成果】
・技能の積み重ね
 5年生の頃からの持ち上がりのクラスなので、技能の高まりはものすごく感じています。特に6年になってからの伸びはとても感じています。全体的な技能レベルの高さは参観してくださった方々も驚くレベルだったのではないでしょうか。

・課題発見→分析→解決→修正の学習サイクルの定着
→体育に限らず、自分自身で学習のサイクルを回せるようにさまざまな教科で、意識づけてきました。また総合的な学習では、5年生から個人研究という探究的な活動に取り組んできたので、体育でもそのような姿が見られたのかなと思います。探究的な視点は学級経営の軸になっています。

・ICTを使用したことによる協働的な学び
→話し合う材料があると、話し合いが活性化しますね。特に比較対象があるというのが良かったです。

【課題】
いろいろありますが、特に感じたことは
身体的納得」です。
こちらの言葉は、6月に行った校内研究会に講師として来ていただいた先生にいただいた言葉です。体育の本質について吟味するなかで、この「身体的納得」が得られるかというのが体育の本質や価値なのだと教えていただきました。この時はまだピンと来ていなかった言葉ですが、跳び箱の実践を経て、ようやく腑に落ちました。

 今回の授業でAくんが段差跳び箱で首はねとびの練習をしていました。Aくんは首はねとびのタメの動きはできるのですが、ハネがまだ上手にできません。そこでAくんは自身の課題が手の突き放しにあると考え、試技を繰り返しました。しかし手で跳び箱を突き放すというのは分かっていても、どのタイミングで、どれくらいの力で、どの方向に押せばいいのかは掴めていません。結局思うようなハネの動きができず授業が終わってしまいました。

 Aくんは技能ポイントを理解していました。だからこそ、自分自身の課題を「手の突き放し」だと考えたわけです。しかし、結局「あぁ、こういうことか」「なるほど、今の感じだ」という「身体的納得」を得られませんでした。

 それこそが、体育の難しさであり、体育の本質なのだと感じました。つまり、体育では運動を媒介とした教科であるがゆえに「わかる」→「できる」には他の教科にはない大きな隔たりがあるということです。平たく言うと、頭で分かっていても、できない教科ということです、そうであるならば、教師の役割は知識を教えるだけでなく、「身体的納得」を感じさせること。そのためには教師自身の技の深い解釈が必要不可欠であり、子どもたち相互の感覚の共有もしていかなくてはならないのだと感じました。


終わりに

 午後のシンポジウムも含めて、大変有意義な1日になりました。このような機会を与えてくださった主催の加固希支男先生ありがとうございました。そして講師の先生方、運営に携わってくださった本校の先生方や学生さん、そして参観してくださった先生方にも感謝の気持ちでいっぱいです。

 閉会後、講師の登本先生から、
「シンポジウムでもっと体育の話すれば良かった。だって、体育の授業って自分で課題を決めて、場所を選択して、練習して、振り返ってというのがごく自然にできる。だからこそ、他の教科の人も一回体育の授業を見た方がいい」とお言葉をいただきました。他の教科の先生方も参考になるように、今後も授業研究や発信をしていきたいと思います。

※今回の研究会で授業7本中、定員に達しなかったのは私だけです。もっと頑張ります。


いいなと思ったら応援しよう!